12回やみいち行動、上演の記録

第12回やみいち行動   (2001 12/9 19:00〜)
『ぜんざいの耐えられない甘さ』

登場人物

男1、黒衣の救世主、ダバディ通訳、辛十字ヨーロッパ支部長……シコウ
女1・レポーター・モモゼンジャイ(ピンク)……亜邪夢
ぜんざい学者、医者、二人羽織の人間国宝(前)、辛十字総統……鬼豚馬
患者、教官、牧師、サッカー外国人監督、辛十字南米支部長……桶雅景
学生、アカゼンジャイ(リーダー)、義理の父……吉本和孝
アオゼンジャイ(ブルー)……池田一平
ミドゼンジャイ(グリーン)・二人羽織の人間国宝(後)……故太郎
キゼンジャイ応募者・キゼンジャイ(イエロー)、サッカー選手、義理の息子………藤原康弘
 

やや薄暗い明かりの中に男1と女1がいる。

男1 声がする…
女1 空に…
男1 空はあずきに…、よって声があずき…、ジュテーム。
女1 あずきがね、降ってくるんですって―
男1 ……
女1 大丈夫よ。
男1 (何か小さくぶつぶつ呟く)

しばしして、明転。テレビ番組。レポーターとゲストがいる。

レポーター 今晩は、今夜のクローズアップゼンザイでは、皆さんも御存知の通り、あの有名な『あんこ百科』をお書きになりました、ぜんざい学者、善哉小太郎さんをお招きしました。先生、どうぞ。

学者 (興奮して)カメラはどっちですか!!…だからわしは言ったんです!!(あえぎながら)しるこシャワーを止めるにはっ、あのっ、大八車に積んだ家財道具一式と、日本の四季と、アフガンに展開する訳のわからない米軍の指揮、この三つのシキからなる連立方程式の解を真剣に考えねばならっ、ないっ、とっ!!わしがそう言ってるのにっ!誰もそうしようとしないからっ、しるこシャワーが降ることに、なったんです!!

レポーター 本当に…遺憾です。
学者 しるこシャワーをですね、もう、今から止めようとするとですね、止めよとすると…、ここは、私が先日考え出しました多次元分裂善哉式、を…
レポーター あのう…
学者 何ですか!善哉と、金時豆の使用量は比例するというその関係を表す直線略してゼンキン線!
レポーター 先生…
学者 この二つがですね、一番近づく所!その点をっ、探さないとっ、駄目なんです!!分かってもらえますか!(喘ぐ)
レポーター 落ち―
学者 ああカメラこっちだあ!
レポーター 先生、落ち着いて。落ち着いてお座りになって。あの、あんまり――
学者 何ですか。
レポーター 感情的になって説明しても、皆さんあまりお分かりにならないと思うんですが…
学者 ん!?
レポーター 冷静に話し合いましょう。
学者 あなたは分かりましたか!
レポーター …すこしだけ。
学者 少し。少しってのはどれくらいですか。
レポーター いや、だから少しは少しですよ。
学者 それじゃああんまりです!ん〜〜〜!!
レポーター あの先生の話は、長すぎて、こう…、かいつまんでお話いただけないと…
学者 かい、つまむ?
レポーター 言いたいことは沢山あると思うんですよ。でもそれを全部言ったからといって、コミニケイションが成立するとは――
学者 かいつまむってのは、こういう感じですか!?

どういうことをやったんだろう。

学者 背中が痒いときによくやるでしょう。
レポーター いや、やりません。
学者 あなた、それでも、人間ですか?背中が痒いときには誰だって、こ〜う、するんですよ!
レポーター でもそれは「かいつまむ」と関係ないと思うんですけど。
学者 掻けないからつまむんですよお!
レポーター いや、孫の手とか使えば…
学者 孫の手?そんな物は都合良く無いんです!
レポーター 先生、何の話でしたっけ。
学者 (喘ぎながら)ああ…え?
レポーター あ、善哉が、降ってくるんですね。
学者 そ、そうです!
レポーター あれ、しるこシャワーじゃないんですか?
学者 しるこシャワーです!
レポーター 善哉としるこって同じ物なんですか?
学者 …よく似てるんです!
レポーター でも違うでしょう。
学者 違ってもね、似てるんですよ!…はああっ。
レポーター …では、その点については、次回のクローズアップに回しましょう。皆さん、さようなら。…あ、そうです、その、次の次のクローズアップぜんざいでは、皆さんもご存知の二人羽織人間国宝の方をお招きします。では皆さん、さようなら。
…では先生、そういうことで。あ、あたし次の収録ありますので、失礼いたします。

レポーター去る。学者残る。

どこからか波の音がする。(オペレーターが小豆を籠の中で揺らしている)

学者 セグロカモメ?ミサゴ…キンクロハジロ…オシドリ…あれ?オシドリは湖だよなあ。

しばしして。

学者(医者) 入っていいですよ。
患者 (入ってきて)先生、メッキが剥げたんです。
医者 メッキが。何処のメッキですか?
患者 蛇口の。
医者 蛇口。ああー、それはやっぱり寒さと関係あるんですかね。
患者 どうでしょう分かりません。
医者 ここんとこめっきり冷え込んでますからねえ。
患者 ああ、寒いですねえ。
医者 ええ…(上衣を脱ぐ)こんなに寒くちゃおられないですねえ。
患者 先生。ここは精神科ですよね。
医者 そうですよ。
患者 よかった。
医者 私のこの恰好を見て、ここが、精神科じゃないと、お思いですか?

医者は冬山登山風の重装備をして双眼鏡を下げている。

患者 はい、ちょっとだけ。
医者 私はね、患者さんの心を少しでもこう、和ませようとして、いつもこういう努カを怠らないようにしてるんです。
患者 ああ、…KGBの残党の方かと。
医者 何をいってるんだか。…はあ、ちょっと暑くなってきたんて脱ぎますよ。すいませんねえ。(脱ぐ)…で、ええ、メッキが剥げた話でしたっけ。
患者 はい。
医者 蛇口のメッキ。
患者 蛇口のメッキが。
医者 んー…。それは、もしかしたら水道屋さんに行った方がいいかもしれませんね。
患者 まあ、それは。蛇口のことはそうなんですが。
医者 ああ、蛇口のことは。じゃあ他に何かあるんだ。
患者 ええ、不安なことが。
医者 エフワン?
患者 いえ、不安なことが。
医者 ああ。不安なことね。
患者 F1の事で精神科には来ませんよ。先生。
医者 いやあ、来られてもちょっと困る。
患者 まあそうでしょうね。
医者 わたしやドテイバーの名前にもあまり詳しくないもんでね。

医者 ああ、暑いですねえ。…脱ぎたいのだが…
患者 じゃあ、その一番上のをお脱ぎになったらよろしいのでは?
医者 …脱いでもいいてすか?
患者 わたくしは別に。
医者 本当に?
患者 ええ。
医者 じゃあ、先に、下から脱ごうかな。
患者 ああ、そう来るとは思いませんでした。
医者 ?
患者 いえ。
医者 何か?
患者 わたくしも、まともな人間ですから、一度申し上げたことを撤回するようなことは致しません。どうぞ、お脱ぎ下さい。
医者 ああ、一緒に脱ぐ。
患者 脱ぎませんよ。

医者 いや、やっぱりね、精神科ってのはね…
患者 はい。
医者 こう…、ま、患者さんと、私、…先生と呼ばれる事もあるんですけどね。
患者 はあはあ。
医者 ま、こう…、暖かい関係。
患者 暖かい関係は分かるんですが――
医者 そういうものを築いてからでないと、
患者 はあ。
医者 立ち入った話とかは、ねえ。
患者 それは分かりますけど。
医者 その為には、肌と肌の触れ合い…
患者 み、みんなそういう――
医者 スキンシップとか、そういうものを必要なんじゃないかなというのが私の持論でしてね。いや、ここではそういうのを実践することにしてるんですよ。さあ!
患者 みんなそういう趣味とは…、限らない。
医者 え?
患者 …でしょう。
医者 いや、趣味じゃないですよ。仕事ですよ。
患者 いやまあ、それはそうだけど。
医者 趣味じゃないですよ。

医者 はあ、…暑いですねえ。(ジッパーを下ろす)
患者 暑いですねえ。
医者 で、何の話でしたっけ。えーと、メッキが剥がれた話は、担ぎ出さなくていいと。
患者 置いといて。
医者 ええ。(脱ごうとする)

患者 ええ?!…、いえ、どうぞ。
医者 ああ、先にこっちですか?
患者 ああ…。
医者 はあー。…んん。
患者 大きすぎて引っ掛かっちやうんですか?
医者 履いている間に太ったのかもしれません。
患者 ああ…。

医者 うう…、はっ…、よし。(どうやら脱いだのか)で、ええ、話の続きですね。
患者 何か、…体育準備室に来たような気分です。

医者は冬山風重装備を脱ぐと体育教師風ジャージ姿なのである。

医者 いやあ、生憎ここはそういうプレイをする所じゃないんで、跳び箱とかはちょっと。
患者 はあ、かなり微妙なんですけど、僕としても突っ込むべきかどうかよく分かりません。
医者 こんな所で突っ込んではいけませんよ。
患者 ああ、そうくるか。

患者 先生、最近私は怖い夢をみるんです。
医者 怖い夢。
患者 怖い夢です。
医者 怖い夢か、それは大変ですねえ。
患者 大変なんです。はい。
医者 どんな…、夢ですかね。
患者 そのう、私は一生懸命ボケるんですが、誰もほったらかしで突っ込んでくれないという、そういう夢なんです。
医者 ああ。
患者 みんなその、ボケ返そうとするんです。
医者 ボケ返そうとする。
患者 で、ボケ返せない時は流しちゃうんですよ。
医者 はああ、…で、その夢の続きは?
患者 いや、それで終わりです。
医者 それで終わっちゃうんですか。
患者 大変な苦しみなので起きてしまいます。
医者 起きてしまう。
患者 はい。

医者 ああ…、それは大変ですねえ。
患者 大変です。
医者 だいたいその夢をみるのは、寝始めて…、何秒後位ですかね。
患者 秒で…、答えるんですか?
医者 はい。
患者 だいたい、ですから、起きる頃ですから…、明け方頃みていると思うんですが。
医者 明け方頃。
患者 はい。
医者 寝るのは何時頃かなあ。
患者 まあ、ちょっと遅いときは3時とか…、それくらいのこともありますけど
医者 3時。
患者 はい。
医者 えーと、近頃の夜明けの時間て言うと6時前後ですか。
患者 そんなに厳密じゃなくても――
医者 3時間ぐらい。
患者 そうですね。
医者 えーと、秒に直すとどれくらい…、うーん、60×60の、更に3?
患者 ああ、はあ、そうですね。
医者 うーん、1万800秒。
患者 ああ、すごい。
医者 あってるのかなあ。
患者 いや、知りませんよ。

患者 どうなんですかね、それはその。
医者 それは。
患者 おかげで…、睡眠が足りないし。
医者 足りない。
患者 はい。
医者 うーん、足りない睡眠はどこかで補わないといけませんねえ。
患者 それはそうなんですけど、でもあの、大の大人が昼日中眠くなった時いつでも寝ていいと言うわけにはいきませんし。
医者 スペインでも実はそうじゃないという話もありますしねえ。
患者 ええ…
医者 うーん。…スペインに行きますか?
患者 いやあ、そりゃあまあ、出来たらいいですけど、昼寝さえ出来ない人間が好きなようにスペインに行く訳にはいかないのではないでしょうか。
医者 はあ。残念だなあ。
患者 スペインがお好きですか?
医者 いやあ、行けたらねえ。
患者 ああ、行ったことないんですか。
医者 やっぱり…、担当医として、ついていけたらと思ってたんですけどねえ。
患者 はあ。
医者 残念ですねえ。
患者 そんなことばっかりしてるんですか?
医者 いやあ、そういうことも。
患者 ああ、時にはね。
医者 やらなくっちゃあ。
患者 はあ。

医者 そうかあ。眠れない…、眠れないんじゃないですね。怖い夢―
患者 怖い夢みて起きてしまうんですよ。
医者 うーん、ボケ方のパターンとか、そんなものはあるんですかね。
患者 まあ大体あのう、…あれですかね、オカシイことを普通そうに言うか、
医者 はい。
患者 普通のことをオカシそうに言うかどっちかですけどね。
医者 ああ、…そうですか。わたしなら、それくらいのこと別にどうってこと無いですけどね。
患者 だからその、あなたはそうかもしれないけど。私は起きちゃうんだ。
医者 起きちゃう。
患者 起きちゃう。
医者 うーん、どんなにボケてもボケてもボケ返されて、起きちゃう。
患者 うーん、そうですね。流される位で大体起きちゃいますね。
医者 流される位で。
患者 ええ。
医者 その、流れの速さは、どの位?
患者 かなり冷たいんですけどねえ。
医者 いや、私が訊いているのは速さで、
患者 速さ…
医者 何ノットぐらいかな。
患者 ノットに換算するんですか。
医者 ええ。
患者 それはちょっと出来ないですねえ。
医者 出来ない。
患者 アイキャンノットです。

医者 はあ…、アイキャンノットか…。そんくらいだったら。
患者 先生、綴り違うよ。
医者 何が、何ですか?
患者 速度はKが付くんですよ、頭に。
医者 え?Kがつく。
患者 Kがつく。
医者 あの、…念のため、お伺いしますが、
患者 はあ。
医者 あなたは、日本語を喋るときにわざわざアルファベットに直して喋るのかなあ。
患者 ああ…。いや、直さないですねえ。
医者 アイキャンノットでしょ、
患者 ええ、アイキャンノット。
医者 数字の部分が『アイキャン』でしょ。
患者 そりゃ、あの、主語と助動詞ですよ、先生。
医者 ん?
患者 主語と助動詞ですよ。
医者 主語と助動詞。
患者 ええ。

医者 …あなた、何語を喋ってるんてすか?
患者 いや、その部分だけ英語じゃないですか。
医者 ん?おかしいですね。
患者 いやだから、速度的に換算はできないんですよ。
医者 出来ない。
患者 出来ないでしょ、そりや。
医者 いや、そこでね、怠けちゃ駄目なんですよ。
患者 ああ、なるほど。
医者 出来るかぎりの事をして、やってみなければ、ならないんですよ。
患者 はあはあ。

医者 …分かりました。つまり、
患者 はい。
医者 あなたには、その辺の、根性とかがもしかして、ちょっと…、最近、何か欠け気味なのかな。
患者 んん。ていうか、そう…で、つらいから精神科に来るんじゃないんでしょうかね、先生。
医者 ああ、御もっともだ。
患者 そう言われるとなんだか。
医者 嬉しいですか。
患者 嬉しくないよ、先生。大体自分でそういう事思って、つらいから、こう、精神科に来るんじゃないですか。精神科の患者ってのは。
医者 そうですねえ。
患者 こう「努力とか、改善ばっかりが能じゃないよ」とか、そういうことを、いうのかなあ、とかねえ。

医者、受話器の先に電話線でプリンカップが繋がった器具を取り出し、聴診器のように用いて、聴診をはじめる。

患者 ちょっと待って下さい、先生。
医者 はい?
患者 これは何?、これはアダムス先生の鼻みたいな、そういうアイテムなんですか?
医者 私をトナカイみたいなのと一緒にしないで下さい。
患者 ピエロでしょ、トナカイじゃなくて。
医者 ん?
患者 大体今何を聞いていたの?
医者 何を?
患者 んん。

医者 いや、この下のね、鎖骨の軋み具合を。
患者 何か出るんですか?鎖骨に。
医者 出ますよお。
患者 気苦労とか?
医者 気苦労は出ません。
患者 気苦労は出ない、じゃあ何が?
医者 …聞きたいですか?
患者 いやあ、そんな、ショッキングなものでしょうか?
医者 かなり、ショッキングだと思いますねえ。
患者 はあ。
医者 少なくとも、アイキャンノットを換算出来ないような人に、耐えられるような代物ではないと思いますね。
患者 じゃいいですよ。大体、そういう態度をとる世の中に絶望するから精神科に来るんじゃないですか。
医者 でもね。
患者 でもねじゃないよ。
医者 ××××の×××ですから、ねえ。
患者 いやあ、何か、厳しい精神科なだあ、ここは。

医者 分かりました。薬でも出しましょうか。
患者 薬でもって、あなた、鎖骨の軋みで薬を決めるの?
医者 決めますよお。
患者 はああ。精神医療は進んでるなあ。
医者 どれがお好みですか?
患者 好みで決めるのかよ結局。
医者 好みは重要ですよ。合わない薬ってのは飲んでも効きませんからねえ。
患者 効能を先に説明してから…、何が有るのか分かんないじゃないですか。
医者 効能?
患者 はい。
医者 いや、効能は大体一緒です。
患者 じゃ選ぶ意味ないじゃないそれ!
医者 だからこそ選ぶんですよ。
患者 はあ。
医者 効能は一緒だからこそ、合う合わない、そこが、肝心なポイントになるわけです。

患者 効能が一緒だったら、全部、合うんじゃないですか?
医者 いや、合わない人には合いません。
患者 何が合わないんですか?
医者 ん?
患者 大きさとか?長さとか?
医者 もっと漠然とした物だなあ。
患者 漠然としたもの?えらくファジィなんですね、暴近の精神医学は。
医者 仕方がないですね。そういう時には大体この、黒いのを勧めることにしてるんです。

患者 ああ。はあはあ。じゃその、
医者 しかしちょっと…、うーん。念の為に。
患者 念のために?
医者 計っておきますね。
患者 何をですか?
医者 いや、ですから、右の鎖骨の長さをですよ。
患者 はあ。
医者 いや眼鏡は取らなくて大丈夫です。脱がなくても大丈夫ですよ。上から分かりますから。ええ、わたしもね…
患者 何の為だ。ここは本当に精神科なのか?
医者 11.5センチ。
患者 あなた、精神科じゃなくて精神主義者じゃないの?さっきから努カ、努力って言ってるけど。
医者 そんな風に見えますか?
患者 いやまあ、そういうファッションは割とそういう人多いと思いますけどねえ。
医者 (ジャージ姿で)ああ。
患者 それ偏見でしょうかねえ。
医者 いや、そういう人はね、ま大抵この季節には、もう一枚ウインドブレーカーを着てますね。
患者 ああ。着てますねえ。
医者 だから私はそうじゃないです。
患者 ああ、なるほど。
医者 ただの暑がりです。…ということで、まあ、あなたに処方するのはこれですね。

患者 …それはちょっと待って。
医者 え?…いや、ジンサンシバンムシエキス。知ってるでしょう。
患者 いやあ、勿論知ってはいますけどね…
医者 ああ、話が早いなあ。
患者 いや、ちょっと待って、それはその、心…、自信が無い人に自信がつくような薬ですか?それは。
医者 ええ。つきますよ。
患者 こう、空からあずきが降ってくるんじゃないかとかそういう、訳もない不安を、持ってしまうような人に効くわけですかそれは。
医者 効きますよ。

患者 どう、効くんですかね。
医者 どうって、うーん、そりやちょっと、分からないですねえ。
患者 分からない物処方するの?!
医者 いや、なにしろね、これは世紀の、妙薬と呼ばれている代物ですからね。
患者 いや妙薬って、不思議な薬ってだけじゃないですかそれ!
医者 いやいや妙なる薬ですよ。
患者 妙なる薬ね。同じだよそれ。
医者 妙なる薬、そりゃあやっぱり効くはずですよお。
患者 たから、何にどう効く…いやそれ分からないんでしょお。
医者 (自信ありげに)分かりませんよ。
患者 いや、どうかなあ、それ…。
医者 ああ、動物実験はちゃんとこなしましたよ。
患者 ああそうなんですか。
医者 ええ。

患者 落ち着きます?動物。
医者 ええ。落ち着きます。牛で試したんですけどねえ。だいたい3時間後に、微動だにしなくなりました。
患者 眠ったんですか、それ。
医者 いや、生命活動は停止してたような…。
患者 ちょっと待って下さい。
医者 大丈夫です!牛にはね、この原液を与えてしまったんですよ。
患者 ええー?
医者 いやあ、まあ人間の方が牛より体重は軽いから、んん、原液は勿論だめで―
患者 駄目ですよ。
医者 うーん、150分の1位に希釈したら、…大丈夫です。
患者 本当ですかあ?
医者 ええ。大丈夫です。
患者 そりゃまあ、心臓の悪い人ニトログリセリン飲んだりしますけど。
医者 ええ。
患者 そう…、なのかなあ。

医者 えてして、薬なんて飲みすぎりゃあ、大抵死ぬんですよ。
患者 ああまあ、風邪薬を沢山飲ませて…
医者 飲み過ぎちゃ駄目ですよ。
患者 まあそうねえ…
医者 それで、ええと、薄めてたのが…、ちゃんと用意してありますよ。これかな。…これだ。
患者 それは一日何回くらい、いつ飲めばいいんでしょうか。
医者 ああ、これですか?
患者 はい。
医者 まあ、三日に一回。
患者 はい。
医者 両方の鼻の穴に、
患者 鼻の穴に?
医者 ええ。ぽたん、ぼたんと。
患者 飲んじゃ駄目なんですか?
医者 飲むとちょっと良くないなあ。
患者 じゃ、どこが達うの。だって、ほぼ繋がってるじゃないですか。
医者 いやいやいや。鼻の粘膜にね、直接投与するのがいいんですよ。
患者 鼻の薬でしょう、それは!鼻の粘膜に直接投与するのがいいのは。
医者 あなたねえ。
患者 はい。
医者 知ってるか知らないか知りませんがねえ。
患者 知らないことだと思うな。
医者 鼻の細胞、鼻にある神経細胞ってのはね、まあ神経細胞にしては珍しく、ちゃんと再生する才能があるんです。

患者 はあ、それで。
医者 で、しかもですね、そのう、脳のなかに、非常にダイレクトな形で、その繋がっている。
患者 そしたら、え、口とかは――
医者 普通、まあ例えば、眼なんか一見、脳とダイレクトに繋がっているかなっていう気がするんですけどね、
患者 ええ。
医者 でも、眼の場合は網膜で、こう、明るい光で、光の刺激うけますよね。
患者 受けますね。
医者 そこから、…うーん、普通3つか4つ位の細胞を経て、ようやく脳の中にその、信号が伝わるんです。
患者 はあはあ。
医者 ところが、鼻の場合は、
患者 はい。
医者 もうダイレクトに、鼻の粘膜の中にある神経細胞から、脳に

患者 直接。
医者 直接。
患者 そしたらあの、光ってて臭い物に出会った時は、光ってることよりまず先に臭いことが分かる訳ですか。
医者 …そうですね。
患者 あ、そうなんですか。
医者 用心しないといけませんよ。
患者 そりゃ、用心しないといけませんね。
医者 で、どうです。
患者 嫌ですよ。
医者 でも、鼻ですよ。
患者 鼻ですよって…
医者 いやあ、眼に注すという手もあるんですが、眼の場合は、まあ今の考え方から換算すると、…だいたいまあ一日一回。
患者 一日一回。鼻だと三日に一回ですむ。
医者 ええ。どっちがいいですか?
患者 いや、どっち…、難しいなあ。
医者 あの、時に応じて選ぶというのは駄目ですよ。
患者 何でですか?
医者 いや、それをするとね、ちょっと感覚が麻痺しちやうことが…
患者 ああ、そりゃ怖いですねえ。
医者 ええ。だから途中のこう、脳の中でね、どっちから来た薬なのかな、目かな、鼻かな、ってのが途中でこんがらかる時が、あるらしいんですよね。
患者 脳に行ったら同じじゃないの?
医者 いや、土俵が達うんですよ。指令を受け取る場所が。
患者 ああ、はあ。
医者 じゃ、これ。…そうだなあ、まあ、あげるという訳にはいかないから…

患者 じゃ、私はその、これから薬局に処方箋を持っていって、「ジンサンシバンムシエキスを150倍に希釈したやつで、鼻に注すやつ。」って言わなきゃいけない訳か。
医者 なんですが…。
患者 またここに戻って来ることになると思うよ、そしたら。「あんた精神科、もう一回」って言って。…ぐるぐる回っちゃうじゃない、それ!
医者 そうすると、日が経っちやいますね。
患者 日が経ちますねえ。
医者 日が経つといけませんねえ。
患者 いけませんね。
医者 分かりました。じゃ、ちょっと、裏に行ってもうちょっと大量生産してきますんで。
患者 はあ?
医者 ちょっと、ここでお待ちください。
患者 はあ。
医者 それじゃまた。

医者去り、患者残る。

患者 まあ、なんとなく気が楽になったような気は、せんでもないけどねえ…

波の音。

患者 ここ海が近いのか。

患者、いつの間に教官になる。

教官 え、ということでして、ええ、この間ですね、皆さんと現代の言語について考えてきてもらった訳ですけど、今日はもう、今日で、この講義も最後ということになりましたので、ええあの、講義の最後にレポートの題目の発表をいたしますので、どうぞ最後までおつきあい下さい。別にあの最初に発表すると皆さん帰ってしまうんじゃないかという、疑っていると、そういうことでございますので、ええ…ありがとうございます。なにとぞ、おつきあい願いたい、ね。

さて言語というものはですね、皆さん御存知のように、ええ、ボキャブラリーのレベルでは、こりゃもう日夜というスピードで、進化している訳ですね。ですからそのう、これまでにあった言葉に、全く別の意味が付け加えられるという事はよくあるわけです。例えばその、「往生」という言葉がね、ございますけどもこれはもともとその「極楽に行く」と、そのような意味で使われていたと思うんですけど、まその「難儀なことにあったときに大変困る」という意味でも、「往生」という言葉は使う訳ですね。だからそういう風に解釈すると、「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」というのはですね、「たいへん良い人でも、困ることがあると、まして悪人は、そりゃもう、往生するでしょうねえ」と、いうことになってしまうわけです。

ま、そのようなその、言語的な意味における誤差というところから、ええ、私達は、いかにしてそのう、ま既に大分閉鎖的になっている状況を、いかにして打破するかと、年間をかけて考えてきた訳ですけど、ええ、今日は最後ですので、まああの後期にですね、主に考えてきた文字論のまとめをしたいと思います。あの、来年度からあのう、セメスター制ということで前期と後期に分かれますけれど、ま、あの、なかなかですね、私ども長いことここでやっておりますと、半分半分にうまく分けるということは皆さん出来ないんじゃないかと思いますので、ええ申し訳ないんですが、あの、来年度続きを受講される方は、前期後期と受講していただきたいと、いう風に思っております。

さて、えー…、まあ、最近の数学の方ですね、基礎論の方でトポロジーという物がこざいまして、私はそれに注目して、文字論を組み立て直そうという訳ですね。例えば御覧なさい、(持っている画用紙帳をかざす)これあの、まあ、平面であると、厚みはありますけどね、平面であると大体でいいと思うんですけど、ただこれは、ご覧の通り弾力のある材質で出来ている訳です。ですからこう、例えばこのようにですね、曲げてみたら、こう、トンネル状になるわけですが、じゃあこれでトンネル状になったからといってこれは変化したのかというと、これは元に戻る訳ですね。可逆性があるわけですから、これは単にもとの、えー、形質と同じと考える訳です。これがトポロジーです。トポロジー的にはこの平面と、このトンネル型は、ええこりゃ位相としては一緒であるということですね。位相というのはこの、「位」に「相」という文字を書くのですね。あの最近はお店が一生懸命取ってる基準とかああいうのとは関係ないと。…ありがとうございます。

で、えーまあ、具体的にどのように文字論にそれを適用するかと申しますとですね、ええ、トポロジー的に考えますと、同じ形質の物は同じと、解釈できますから、例えばこれあのー、(画用紙帳をめくる。ピラミッドの前でラクダを連れた人物のイラストが描いてある)『カイロ』。カイロ、エジプトの首都ですね。ええまあ、天気のいい日にはこう、ピラミッドが見えたりするわけですけども、これはトポロジー的に解釈いたしますと、(画用紙帳をめくる。ピラミッドの前でラクダを連れてボディビルのポーズで力んでいる人物のイラストが描いてある)『力イロ(ちからいろ)』!!…天気のいい日にはッ!!…ピラミッドが見えるッ!!…、(思いきり力む)

という風になるわけですね。…ええ、同じようにですね、えー(画用紙帳をめくる。カントのイラストが描いてある)『カント』。純粋理性批判を書いた、ドイツの一番有名な哲学者と言ってもいいんじゃないかと、それではですね、…まあ大体想像はつくと思うんですけど…(画用紙帳をめくる。両手にダンベルを持ち、歯を食いしばり、ヨダレをたらして力んでいるカントのイラストが描いてある)『力ント(ちからんと)』!!…『力ント(ちからんと)』!!えーもう理性どころじゃないですね。どっちかっていうと俺かケイン・コスギかっていうそういう感じですけど。

(画用紙帳をめくる)それから最後にえー、こちら、『カムパネルラ』。(アニメ映画風、ネコのカムパネルラのイラストが描いてある)…『カムパネルラ』これはですね、(画用紙帳をめくる)「ジョバンニ、僕たちは最後まで一緒だと言ったよね。」「降ろしてくれカムパネルラ」…(画用紙帳をめくるとカムパネルラがジョバン二をはがいじめにして引き止めているイラスト)力づくかよ!、『力ムパネルラ(ちからむぱねるら)』!!、『力ムパネルラ(ちからむぱねるら)』!!ということで、全然いい話じゃなくなっちゃう。45分後にはジョバンニのお母さんも川沿いで、「もう45分経っちゃった…」と、いうことになっちゃいますね。

ええ、ということで…、ああ、レポートの題目ですね、えーレポートの題目はですね、「何故演劇関係の制作担当者には、偉そうな人が多いのか」ということについて、実例を挙げつつ、えー800字くらいでまとめてきて下さい。名前だけ並べるのは止めてくださいね。読むのつらいですから。えーでは今期はこれくらいにさせてもらいたいと思います。

学生 (突然現れ)先生!
教官 はいはい。
学生 先生!
教官 はいどうぞ。
学生 しんぶんし!逆から読んでもしんぶんし!
教官 そら回文や。
学生 シンブンです!
教官 ああ…、一枚あげましょう。
学生 (画用紙帳を出して)一応、作ってきました。
教官 はい。
学生 見ますか?
教官 見ます。

学生 『め』と『ぬ』について考えて来ました。
教官 『め』と『ぬ』について。
学生 (画用紙帳をめくり)『めちゃイケ』。
教官 めちゃイケ。
学生 (画用紙帳をめくり)『ぬちゃイケ』…使用法と致しましては「君の彼女ぬちゃぬちゃイケてるなあ。」…イケてないです。
教官 イケてないですねそれは。
学生 もしくは、「明日テストやから、ぬちゃぬちゃ頑張って!」…頑張んなよ
教官 ぬかるみで足を取られてるようですね。

学生 (画用紙帳をめくり)点と丸。
教官 点と丸。
学生 パイが、ですね。
教官 パイが。
学生 ばい(倍)に。
教官 はあはあはあ。
学生 なりましたよ!
教官 なりましたか!それは…、実用可能ですね。
学生 凄いですよ。
教官 凄いです、それは。3単位ぐらい、差し上げます。
学生 あと…、これは関係ないのですが、

教官 はい。
学生 『少女』がですね。
教官 はい。
学生 (画用紙帳をめくって)『レディー』に。
教官 ♪小さくなるよ大きくなるよ凄いよ。♪ららら、ららら、ららら、ららら、らーららーらーららー…
学生 遊ぶな!あと、(めくる)『恋』がですね、…『ラブ』にと、
教官 (歌いながら去る)
学生 帰ってこーい!…どこで道を間違ったかなあ。…

波の音。

学生 遅いなあ…。

青いスカーフを巻いた男がやって来る。

ブルー リーダー!リーダー、行ってきました。

学生はいつの間にかリーダーになっている。

リーダー どこへ。
ブルー いえ、ですから色々聞き回ってましたよ。
リーダー それで首尾は。
ブルー まずまずといった所です。

リーダー 具体的に言ってくれ。
ブルー ですからですね、まず、あちこちに聞き回って、近頃どういう噂が流れているか聞いてきました。
リーダー ほう。
ブルー どうも、ぜんざいが空から降ってくるという噂が、巷に流れているようです。

リーダー ちょっと待て。お前はどこに聞き込みにいった。
ブルー いやですから、その辺の、近所のおじさんとか、おばさんとか、みんな言ってますよ。
リーダー 一つ結論がある。
ブルー はい。
リーダー おまえがおかしいか、周りがおかしいかだ。
ブルー いやでも、みんな言ってるんですよ。
リーダー 言ってないよ。
ブルー 言ってますよ。
リーダー なに、それで俺が「みんな言ってるんだ!」とかいって、後で楽しもうとか思ってるの?
ブルー いえいえ、そんなことないすよ。あの、冗談じゃなくてね、本当にそういう噂が広まってるんです。奴等のせいですよ、これは。私は奴等のこれは情報操作だと思ってます。
リーダー ブルー。
ブルー はい。
リーダー 起立。

ブルー、立つ。

リーダー 気をつけ。…甘ったれるな!
ブルー リーダー…。
リーダー そんな事でなあ、我々ゴゼンジャイ、辛十字軍を倒せると思ってるのか!
ブルー し、しかしリーダー、何がいけなかったのか私には分からないんですが。
リーダー 残念だが、存在そのものかなあ。
ブルー どうしたらいいんでしょう。
リーダー おいおい直していこう。…『家出のドリッピー』とかから始めてみようか。
ブルー 英語は苦手なんですけど。

縁のスカーフを巻いた男が入ってくる。

グリーン うっ(よろけて)、「もう駄目です、撤退しましょう。」…「何を言ってるんだ、このカンダハルは死守しなければ、死守しなければいけない、…あっ」「ビンラディン様、もう駄目です。カンダハルから撤退しましょう。どうしたらいいんですか、もう武器もありません。撤退していいですね…すいません。そんなに悔しいんですか?…そりゃ、悔しいでしょうねえ、そんなにも、下唇を、かんだはる。」

…ふははははは!天が呼ぶ、地が呼ぶ、収人を隠せと佐知代に轟く、…疾風のグリーン、帰って参りました!

リーダー ……。
グリーン もう一つやった方がいいですか?
リーダー いや、おなかいっぱい。
グリーン あと3つ位あります。
リーダー それは、家に帰って一人でやってくれ。
グリーン わかりました。
リーダー どこへ行っていた。
グリーン アフガニスタンに。
リーダー …ボケだな。
グリーン いや、観光だったんですけど。出られなくなってしまって。すいませんでした。
リーダー それで、仕事は。
グリーン してません。っていうか、ありませんでした。
リーダー それは、無いだろうな。…ぜんざい集合。

3人 (立って並ぶ)
リーダー あん!
3人 (ポーズ)
リーダー あん!
3人 (ポーズ)
リーダー ゴゼンジャイ。
3人 (ポーズ)

グリーン リーダー。
リーダー 何だ。
グリーン なんか、おかしくないですか?
リーダー 何がおかしい。
グリーン ゴゼンジャイですよね。
リーダー そうだ。
グリーン なんか、ロッテの外野みたいになってるんですけど。客席みたいになって…なんか、物足りなくないですか?

リーダー ええと、…二人たりないたけだろ。(殴る)
ブルー リーダー、突っ込みなんですか?
グリーン ていうか、家で何かあったんですか? 
リーダー …
グリーン 白くならないで下さい!頭なんですよあなたは、白くならないで下さい!
リーダー …いろんなことを考えでしまった。
グリーン 駄目です。反復しちゃ駄目です。今までの人生反復しちゃ駄目です!
リーダー 小さな子供のことを…
グリーン 駄目です。…で、今日は何で集まったんですか。
リーダー そうだ。どうしようかな。…我々ゴゼンジャイ、一人足りないよな。
ブルー いや、二人足りないって今言ってませんでした?
リーダー それは分かってる。二人足りないけれども、
ブルー はい。
リーダー 四人はいるじゃないか。…ここにはいないぞ。先に言っておくが。
ブルーグリーン はい

リーダー ピンクはだな、今重大な任務についている。
ブルー 重大な任務。そうなんですか、初めて聞きました。
リーダー それはいま初めて言ったから。
ブルー で、どんな任務なんですか?
リーダー とうとう、
ブルー とうとう、
リーダー 辛十字総統と思われる人物が、見つかった。
ブルー 辛十字総統が?そうなんですか!じゃあもう、決戦の時が近いわけですね。
リーダー そうだ。いよいよ最後の決戦の時だ。
ブルー はあ。
リーダー それで我々ゴゼンジャイ、
ブルー はい。
リーダー 一人足りないよな。
ブルー そうですね。
リーダー このままではカッコが悪い。
ブルー 確かに。
リーダー そこで、一人面接して入れることにした。
ブルー …面接ですか?
リーダー ああ。
ブルー 面接?
リーダー ヒーローとして、資質を持ってるかどうか、我々と一緒にやっていけるかどうか、これから面接したいと思ってる。二人とも、先にヒーローになったものとして、その模範を示してほしい。分かったな。
ブルー はあ。

リーダー (グリーンに)おまえ何で傍観者だ。
グリーン 爆笑オンエアバトルかなと思って。最後にボール入れたらいいんでしょうか。 
リーダー 帰るか。
グリーン いやあ、帰りませんよ。面接ですよね、ちゃんと聞いてました。新しい新人を入れるんですよね。
リーダー そうだ。
グリーン 新人ていつも新しいですよね。
リーダー そうだな。突っ込まないよ。
グリーン 冷たいなあ。
ブルー で、その新人はどこにいるんですか。
リーダー もう来ている。
ブルー もう来ている。
リーダー 呼び込んでいいか?…(グリーンはリーダーの服のポケットをさぐっている)こんなとこには入っていない。
グリーン 後輩か。後輩が出来るのか、うれしいな。
リーダー 心の準備はいいか。ちょっとびっくりするぞ。
ブルー え?何か異常な人なんですが?
リーダー それは見てのお楽しみだ。それじゃ呼び込むぞ。…30番の方、どうぞ。

 あ、失礼します。あの、入ってよろしいですか?
リーダー 入りたければ。
 じ、じゃあ、失礼します。

黄色い服を着た男が現れる。

応募者 始めまして。
3人 どうも。
応募者 キゼンジャイとして、この度応募させていただきました、藤原康弘と申します。ええ、年齢は、恥ずかしながら30になります。
グリーン 恥ずかし…(笑う)ごめんごめん。
応募者 ええと、しゅみは、ええ、一応音楽鑑賞ということで、はい。
リーダー ああ。
応募者 ええ、家族構成は自分一人です。
グリーン リーダー、合格でいいんじゃないでしょうか。
リーダー そんなに簡単か?
応募者 え?リーダー?、この方が?、失礼しました。私、あの方(ブルーのこと)かと思ってました。…はじめまして。
リーダー じゃ、あの方にするか?
グリーン 僕も賛成です。
ブルー ああ、じゃあそうしましょうか。
グリーン リーダー!、どうしましょう、彼。
ブルー 失格。
応募者 ち、ちょ、ちょっと、ほんとのリーダーあなたなんでしょ。リーダーシップ発揮して、入れてくださいよ。
リーダー どうします?、リーダー。(ブルーに)
応募者 僕は、正義のために戦う準備は出来ています。あれでしょ、「日本の小豆は安全です。」とか、そういうこと訴えていったりするんでしょ。
リーダー そんなことはしない。
応募者 え?じゃあなんですか?あの、ゼンザイ力発電所から、ぜんざいが流出するのを防ぐとか、
リーダー そんなこともしない。我々は辛十字軍と戦うだけだ。
応募者 あ…、そ、…辛十字軍はそういう事してるんじゃないんですか?ゼンザイ力発電所襲ったり、
リーダー もっと小規模だ。…例えば、最近の事件としては、給食のプリンがすべておかきに替わるという事件があった。
応募者 恐ろしい。
リーダー もしくは、菓子職人が、街頭アンケートのふりをして「あなた菓子職人ですか?」「はいそうですけど」…いきなりビンタだ。とまあ、こんなところだ。
応募者 かなり陰惨ではありますね。
ブルー いやな奴等だよ。
リーダー 愉快犯だよ。

応募者 それで、僕は戦います。ですから、はい、戦う準備は出来てます。ヒーローとして、はい。
リーダー 一応テストしてみるか。
ブルーグリーン そうですね。
応募者 テ、テスト?
リーダー うん。
グリーン そりゃそうだよ、誰でも簡単には入れないよ。僕等だって厳しい試験うけて入ってきたんだからね、ねえブルー。
応募者 そ、そうなのか、頑張ります、はい。
リーダー じゃ、グリーン一問出してみるか。
グリーン 分かりました。じゃ、一般非常識から一問いくぞ。『槙原敬之君が自動車に乗っていました。』
応募者 はい。
グリーン 『駐車場で車を止めました。お巡りさんに捕まりました。何故でしょう?』
応募者 え?

グリーン ぶー!、時間切れだ。駄目だよ。
応募者 答えは何なんですか、リーダー。
リーダー 俺も分からん。それはなんだ。
グリーン 答えはですね、お巡りさんが言ったんです。『ぼ、僕はちゃんと駐車場に入れましたよ。』『いえ、あなたが注射禁止なんです。』

リーダー いや、そんなことはない。…分かった、お前の言う通りだ。
グリーン ありがとうございます。ただ目立ちたかっただけなんです。…合格でいいんじゃないでしょうか。
リーダー なんでだ!答えてないだろ。
グリーン いや、ていうか僕の気分がもう合格なんで、入れてあげたらいいと思います。
リーダー お前は満足かもしれんがそういう訳にいかん。…ブルーも出してみるか。
ブルー そうですね、じゃあもうちょっと、厳しい質問をしてみましょうか。
応募者 はい。
ブルー 山のあなたの空遠く、…続きはなーんだ。
応募者 え、とお…幸い住むと人の言う、じゃないんですか?
ブルー 駄目ですね。
応募者 え?
リーダー ちょっとまて、ここはどういう場所だ。
応募者 正解は何なんですか?
ブルー 答えはありませんよ。

リーダー …それか。そういうことだ。
応募者 何かチームワークいいな。ちきしょう。
リーダー 残念ながら、今のところマイナス10点だ。
応募者 ええ?…逆転のチャンスを!
リーダー ああ、じゃあ最後にヒーローとして一番大事なものを、…ヒーローとしてノリを確かめてみたい。
応募者 ノリ?
リーダー これが出来れば入れてやろう。
応募者 ああそうか、がんばろ。
リーダー (明るい声で)明日来てくれるかな?

応募者 それは…、え、なんだろ。…いえーい。
リーダー ノリ悪い。(殴る)
グリーン 合格でいいんじゃないでしょうか。
リーダー 一人足りないしなあ。ああ、…じゃあ、見習いな。
応募者 見習い。
リーダー うん。
イエロー はい。
リーダー 見習いだから、キゼンジャイだけど、一応後ろにクエスチョンマーク付けるように。
イエロー ?
リーダー だから、辛十字軍と戦う時は、我々は「アカゼンジャイ!」とか「ミドゼンジャイ!」とかいうけども、君は「キゼンジャイ?」
イエロー …はい。
リーダー 疑問形で答える。
ブルー リーダー。
リーダー ん?
ブルー 彼にもポーズをつけたらどうでしょう。
リーダー そうだなあ、…何かポーズやってみるか。
イエロー え、ポーズってあの、戦う時にキメる奴ですか。
リーダー そうだ。
イエロー あれって自分で考えるんですか?
リーダー いや、とりあえずやってみろ。それを私が判断する。
イエロー はい。えーと、じゃ、(ポーズ)

リーダー はい決定。
イエロー ええ?
リーダー 君は戦う時必ず、「キゼンジャイ?(ポーズ)
グリーン リーダー、キャッチフレーズはどうでしょう。
リーダー キャッチフレーズか、…キャッチフレーズ、考えてみるか?
イエロー え?
リーダー それとも俺がつけようか、どうする?
イエロー え、キャッチフレーズってのは知らないなあ、皆さん、あるんですか?その、…キャッチフレーズが。
リーダー 戦うときになあ、一応自己紹介をする。
イエロー はい、なんか源平合戦みたいだな。
リーダー まあ、大体ゆっくりしてるんだ。戦いというのはそういうものだ。フランス料理にマナーがあるように、戦いにもマナーがある。
イエロー はい…ちょっと自分でいきなり考えるの何ですから、皆さんの間かせて下さいよ。

リーダー じゃあ、グリーンからいくか。
グリーン あ、僕ですか、僕は『18番のグリーン』です。
リーダー いや、俺は『グリーングリーン』の方がいいと思うな。
グリーン じゃそれでいきましょう。…ブルーは?
ブルー 『人間失格のブルー』。
グリーン 前向きだなあ。
リーダー じゃあせめて、『一生懸命なブルー』にしてください。
イエロー 決まってないんじゃないんですか?
グリーン リーダーに口を出すな。
リーダー 高くつくぞ。
イエロー すいません。
グリーン ちなみにリーダーは何なんですか。
リーダー 俺は『こだわりの赤』
グリーン 赤って…、これ赤なんですか?、まあいいですよ、何でもいいですよ、あなたがどうなろうと。…どうしましょう、イエローは何か付けてあげましょうか。
イエロー すいません、自分でつけたのちょっと、皆さんのを聞いて自信を無くしました。
リーダー じゃあ君は『きききききー』君。
イエロー 『きききききーのキゼンジャイ?』
リーダー そうだ。
グリーン (笑いながら)…思ったよりおかしいわ。じゃあ合格ですね、彼は。
リーダー 一応見習いとして。
グリーン よおし、やったな新しいイエロー。
イエロー 人生遠くにきたもんだねえ。
グリーン 来すぎだよおまえ、じゃあこれで。
ブルー それじゃ、リーダーどうします?
リーダー 任務の話をするか。…いよいよ我々は決戦に向かう。
イエロー はい。

グリーンが何かしている。

リーダー じゃあそれは続けてくれ。
グリーン お見通しだな、リーダー。
リーダー いよいよプロジェクトAの決行だ。
グリーン プロジェクトAですか。
リーダー ああ。辛十字総統、辛十字軍といよいよ決着をつける。
グリーン ついに来たのか、この時が。
リーダー 奴等を見つける。
ブルー …見つけたんじゃないんですか?
グリーン ここまできて…
リーダー もう一回いくぞ。
ブルー はい。
リーダー 奴等を見つける!…辛十字総統だな!、…捕まえた。…以上だ。
グリーン すごい壮大だと思います。
ブルー リーダー、分かりやすいです。
リーダー シンプル・イズ・ベスト。
ブルー それで、具体的にはどうするんでしょう。
リーダー その場その場で考える!
グリーン 行き当たりばったりですね!
リーダー それが一番成功する。
グリーン そりゃ確かにそうだ。
リーダー じゃ、最後の晩餐にするか。
イエロー え?最後?
リーダー 戦う前はいつも最後の晩餐だ。明日帰って来れるかどうかは分からない。
イエロー 帰って来れそうな気がする。
グリーン 分かりました。最後の晩餐ですね。
ブルー じゃあ、用意しましょう。
グリーン イエロー、手伝ってくれ。
イエロー なんでしょう。
グリーン これ出してくれ。…我々はな、いつ死んでしまうかもしれない。だから大きなプロジェクトのまえはいつもこうやって全員で食事をとるんだ。
リーダー なんせ相手は人間国宝だからな。
イエロー え?
リーダー 人間国宝だ。
イエロー が、何なんですか?
リーダー 辛十字総統だ。もっと言えば、ふたり羽織の人間国宝だ。
イエロー ににん…え?
グリーン リーダー、微妙です!
リーダー そうだな。…『だい人気』でも『おお人気』でもいいだろ!
グリーン それはいいですが、さっきのは駄目です。
リーダー じゃあ俺は、後でトイレで反省。

イエロー え、いいんですか?、人間国宝捕まえていいんですか?、捕まりませんか僕たちが、そんなことしたら。
リーダー 何で捕まるんだ。
イエロー だって人間国宝でしょ。
リーダー 人間国宝に化けているんだ。
イエロー あ、人間国宝に化けている。
リーダー そうだ。
イエロー ああ。
グリーン あの噂は本当だったのか。
イエロー え、それで、その人間国宝に…ちょっと待って下さい。
リーダー 何だ。
イエロー ゴゼンジャイじゃないんですか。
リーダー そうだ。
イエロー 僕、4人しか見えないんですけど。
リーダー ピンクは今、辛十字総統をマークしている。
イエロー あ、そうなんだ。もう、行ってるんだ。
リーダー そうだ。君の面接があったから、我々はこうして残ってるんだ。
イエロー あ、そうなんだ。女の人に一番危険な所に行かせて。
リーダー 一番強いんだ。
グリーン イエロー、時代だよ。

リーダー …おかしいぞ。何か辛くないか?
イエロー え?
ブルー 辛い?
イエロー 何が。
リーダー 辛い臭いがしないか?
イエロー え、辛い臭い?
ブルー そういえば、かすかに。
リーダー これは、朝鮮キムチの臭いだ。
ブルー そうですが?
グリーン そんな臭いしますか。
イエロー 朝鮮キムチ、台湾キムチとがそういうのが別にあるんですか?
リーダー じゃあ俺が作る!

リーダー 残念な知らせがある。この中に辛十字軍が紛れ込んでいる。
3人 え!
グリーン (リーダーの服のポケットをさがして)いません。
リーダー そんなとこにはおらん!
グリーン そんな…、だってゴゼンジャイの本部ですよここ。
リーダー 考えたくない事だが、この中に裏切り者がいるかもしれん。
イエロー ええ!?
ブルー そんな奴がいるんですか!
グリーン だれだ!
イエロー ぼ、僕今入ったばかりだから裏切るなんてそんな、どうやったらいいんですかぼくは。

リーダー それは分からない。…そこで、しょうがない、いたって科学的な捜査方法を採りたいと思う。
グリーン 捜査するって、っていうことは…、リーダー、皆を疑ってるんですか?
リーダー 疑いたくはない。だが、そういう商売だ。
イエロー 商売…。
グリーン リーダーはいつも微妙に訳が分かりません。
リーダー じゃあ、捜査してみるか。
ブルー 捜査っていうと、何をするんですか?
リーダー ロシアンルーレットだ。
ブルー (ジャジャジャーン、とピアニカで吹く)
リーダー ありがとう。
イエロー 今私にはロシアンルーレットって聞こえたんですけど。
リーダー そうだ。
イエロー ほんとの?
リーダー ほんとのロシアンルーレットだ。
イエロー そうなんだ。

リーダー あ、こしあんだけどな。
イエロー え?
リーダー あの、こしあんを…、普通最後の晩餐っていうのは、普通にぜんざいを飲むんだ。全員で。…けれど、一つ、ぜんざいじゃない物をまぜておく。
イエロー はあ。
リーダー それで、当たった奴が犯人。
イエロー ええ?
グリーン 凄い科学的だ。
ブルー リーダー。
リーダー ん?
ブルー つぶあん入れちゃいました。
リーダー 大目にみよう。
ブルー すいません。
イエロー 何なんですか、その、一つ混じっているものってのは。
リーダー 大体辛いものだ。
イエロー 辛いもの。
グリーン そんなもの僕たち飲んだら駄目になっちゃうじゃないですか。
リーダー そうだな。しかし、辛い臭いがする以上、これに耐えねばならん。
イエロー その、材料が辛い臭いするんじゃないですか?
リーダー 貴様、俺の鼻を馬鹿にするのか!
イエロー いやあ、そんな事ないです。はい。
ブルー 警察犬並みだぞ。
イエロー はあ…、何て言えばいいんだろうな。

グリーン リーダーこんな事してる場合じゃないと思います。
ブルー もっと他に有効に生かして。
グリーン …僕は裏切り者じゃないですよ!
リーダー そう願いたい。
ブルー (用意をしながら)リーダー、辛くしなくちゃいけないですか。
リーダー 少しだけね。
グリーン ブルー、背中が笑ってるんだが、どうしたんだろう。
ブルー それはお楽しみだ。
グリーン そうか…、イエローも凄い時に入って来たよな。プロジェクトAでしかもいきなりコシアンルーレットだなんて。
イエロー そうか…。

ブルー、一つの汁粉碗にもずくとわさびを投入。他のメンバーからは見えない。

グリーン でも、リーダー。もしリーダーがそれに当たったら、リーダーが犯人って事ですよね。
リーダー ああ、そうだな。しかし、そんな事はない!
イエロー ええ?、…それは何かイカサマがあるのか…、
リーダー いや、根拠の無い自信だ。
グリーン それはいつも得意ですよね。
リーダー お前は俺に何かあるのか。
グリーン いや、別に何も無いです。あるのは嫉妬だけです。
リーダー そうか、…じゃ、準備が出来るまで、豆知識でも、喋るか。
イエロー 豆知識。
リーダー ああ。
イエロー 為になりそう。はい。聞かせて下さい。
リーダー サンドイッチてのは、サンドイッチ伯爵って人が作ったらしい。
イエロー …はあ。
リーダー びっくりしないか。
イエロー いや、知ってましたよそんなこと。
グリーン リーダー、豆過ぎます。
リーダー ああ。
グリーン 小さすぎて見えません。その知識。
リーダー じゃあねえ、じゃあ…、読売巨人軍てのは、ジャイアンツとも言うらしい。

イエロー 何か、凄い秘密が隠されてるのかな、その…、駄酒落とかあるのかな。
リーダー 一つで二つ美味しいみたいな。
グリーン リ、リーダー、もうちょっと突っ込みのことも考えて下さい。いつもあなたはそうです。
リーダー いつもじゃないよ。2日に一遍ぐらい。
グリーン けっこう偶数なんですね。
リーダー うん。偶数好きなんだ。
グリーン ブルー長くないか。
ブルー 出来ました。

テーブルにお碗が4つ、蓋をして並んでいる。

リーダー よし。しかし、このままでは何がどれか、ブルーは分かってしまうな。
ブルー ええ。
リーダー そこで誰かに混ぜてもらわなければいけないな。
ブルー そうですね。
イエロー じゃ私が。
リーダー いや、お前だったら意味がないだろ
グリーン 私がやります。
リーダー 駄目だ。お前は一番イカサマをしそうだ。
グリーン 人生全てイカサマです。…どうするんですか。
リーダー ええと…、(お客さんに)すいませんが、混ぜてもらえませんか。我々、後ろを向いていますので。あの、準備が出来たらどうぞとでも言って戴ければ。
ブルー ようし。
グリーン けどあの、(中身を)混ぜちゃ駄目ですよ。(碗を)混ぜるんですから、混ぜちゃ駄目ですよ。
イエロー リーダー、誰に話してたんですか?
リーダー うん?
イエロー 何かここは精霊か何かおるんですか?
リーダー お前の知らない世界だ。
グリーン 僕も知りたくありません。

4人、後ろを向く。

リーダー 何か緊張するなあ。
イエロー そうですね。
リーダー 修学旅行一日目の夜みたいだな。
イエロー そ、そうかな。
グリーン ドキドキ。
リーダー お前、好きな娘とかいるの?
イエロー おまえこそ――

お客さん どうぞ。
リーダー 意外と早かった。
グリーン どういう順番でいきましょう?
リーダー よしじゃあ、イエローから行こう。
イエロー 一番最初でいいんですか?
リーダー うん。
イエロー 新入りなのに。
リーダー 新入りだから。
イエロー そうか、ようし。…見ないようにして。
グリーン あー、僕グリーンだけどブルーだよ。
リーダー 上手くない。
グリーン 次は誰ですか?
ブルー まだ取ってない。
グリーン あそうなの?
リーダー それじゃブルー。
ブルー はい。(取る)
グリーン あいつ潔いなあ。
リーダー グリーン。
グリーン はい。…残ってるこっちでいいや。(取る)
リーダー (残った碗を取り)ようし、せーので一気する。
イエロー 一気なの?

グリーン 外が騒がしいですね、リーダー。(お客さんがなかなか笑い止まなかった)
リーダー 本当だな。いくぞ。
3人 はい。
リーダー せーの!

皆、一気に碗の中の物体を飲む。

3人 ……。
イエロー (明らかに苦しそうに)あ、甘ーい…。

リーダー 異常なーし!
グリーン よかったあ、僕もおかしいと思ったよ、この中に裏切り者がいるなんて、ないと思ってたよ。
イエロー (咳き込んでいる)
リーダー 私の思い違いだった。
グリーン 駄目ですよリーダー。
リーダー じゃ、片付けるぞ。
イエロー (咳き込んでいる)
グリーン 何笑ってるんだい?
イエロー (咳き込んでいる)
リーダー そんなに嬉しいか。
グリーン イエロー、何か違うところもイエローなんだけど。
リーダー ははーん。武者震いだな。…ようし、みんな、5分後に玄関に集合だ。
ブルー 分かりました。
リーダー 遅れたらデコピンだぞう。

全員去る。

後ろにある暗幕が開くと、そこには十字架につけられた半裸の男がいる。何故か荊冠の代わりに電飾をされている。しばしして、牧師が出てくる。

牧師 えー、マルコによる福音書、第14章よりお読みいたします。『アメデオ、明日こそお母さんに会えるよ。』

…えー、今度こそ、本当に「まるこ」による福音書、第14章よりお読みいたします。『あーあ、アタシ何だかもうお腹すいちやったよ。おかあさーん。』(まる子やね)

…えー、その方は私たち全ての罪を贖うために十字架についてくださったのです。これを『十字架上での贖罪(しょくざい)』と私たちは呼んでおります。天にまします我等が父よ、ねがわくは、えー、甘味を尊ばれんことを。えー、小豆の天に於いて煮られます如く、地に於いても煮られますように。我等に日用のぜんざいを今日我等にお与え下さい。我等につまみ食いを為す者を我等が許す如く、我等のつまみ食いをもお許し下さい。我等を辛味より救い、我等に苦味を仕向けないで下さい。お砂糖とお水と小豆とはとこしえにぜんざいのもとだからです。

牧師去る。後には十字架につけられた半裸の男が残る。

十字架上の男 (唐突に)♪フンフンフンフーン。フンフンフンフ〜ン。フンフンフンフーン。(甲高い声。主婦の声色)「アラ、とても遅くなったわね、今日はモツ鍋にしましょうかしら。アラ、醤油忘れてるわ。」「(低い声。男の声)はい奥さん。どすん。」「ア!醤油!そんなところに!、貴方はだれ?!」「ンッフッフッフッフッフッフッフ。じゃがいも人参!んー、ガーリックさらに生姜生姜ー!玉葱〜。どこからともなく現れる、私はあ、めしや、メシヤ、メシヤ〜!しょくざい上がったりいっ。」「…あなた、一体誰?」「限り無く素っ裸に近い、メシヤー!」(がっくりと首を垂れる)

喘ぎながら、サッカー選手らしき男が走り込んでくる。

選手 はあはあ…
牧師 (外国人監督になっている。ホワイトボード片手に戦術らしきものを書き込むが)ナーソーソーウア、フナクォホネ、フナクォドウーダードウー、ウェーサーホウ、ウアゼーホーネ。
選手 か、監督何言ってるか分がんないっすよ。
監督 ナーホーセードウーサー、フアーセーフーウー!
選手 ああ、ダバディさんどこ行ったんだ。
監督 ファンドオ、ゼア。
選手 ええ、だから、俺たちバックスはどうしたらいいんですか?
監督 ヅアグウ!デアドウー。
選手 あ、ダバディさん!こんな所に…。(十字架の男の縄をほどく)
メシヤ (ダバディさんになっている)あ…、ちょっと予定より早いな。
選手 ダバディさん。俺ちょっと顔洗って来ていいすか?(顔についた辛子入りモズクの残りが取れきっていないのだ)
ダバディ 行ってこい。…ちくしょう、××てこうって決まってるんだよ。もうちょっと間をもってくれよ。よいしょ…ていうことで…

選手 (顔を洗って来たのか?)オ、オス。
ダバディ じゃ、私通訳なので、ノート持ってきた。
選手 で、俺たちバックスはどうしたらいいんですか?
監督 ナラソードウエア。
ダバディ 「君は、君は屋久杉を見たことがあるか。」
選手 え?
監督 ウァーデートウー。
ダバディ 「屋久杉には、三つ、実を見た、私は。」
監督 ホゲホウーガラ、グウェ。
ダバディ 「そして、豊かな水を育みながら、」
監督 メドウエートー、ホーウェ。
ダバディ 「大きな匂いを運んできた。」
監督 ホデホートウー、ウェ。
ダバディ 「つまり、この作戦でのお前の位置は、木だ!」
選手 俺サッカーやってるんじゃないの?
監督 フーウーベートウーフフー。
ダバディ 「木になれ!」
監督 タベフフ。
ダバディ 「風になれ!」
監督 フヌフフフ。
ダバディ 「光になれ!」
監督 デーヴェーデードウダー、ダードーピア。
ダバディ あと、…監督、よくわかりません。…次はこの発掘だ、行くぞ!、お前バックスだ!…ちゃんと頑張れよ、走れよ。

監督とダバディ、去る。
波の音。

選手 二階に登らされて梯子を外されたらこんな気分するのかな。

波の音。しばし。
お父さんが入ってくる。

 遅れたかね。
選手(息子) いえいえ、何言ってんですお父さん。座って下さいよお父さん。(椅子を出す)
 ……。(新聞を出して、読む。)
息子 寒くなりましたね。
 うん…。

息子 (テレビを見て)あ、天気予報だ。…あ、お父さん、小豆に確率が出てますよ。小豆が10%
 出来るの?
息子 降ってくるんですよ。
 そんなことは無いだろう…。
息子 そんなことは無いって…、けど、天気予報ですよ。科学的な根拠がなきゃそんな事…。

息子 チャンネル変えましょうか、…あ、クローズアップゼンザイだ。えー、今週はなんか人間国宝みたいですね。楽しみだなあ。
 それで、話というのは?
息子 あ、えーとですね、あのう、言いにくい事なんですけど、えーと、…いやあ、ほんとに言いにくいな、どうしよう。あー、やっぱり明日にしようかなあ。
 明日は忙しい…。

息子 じゃあ、えーと、お父さんは、えーと、なんでお母さんと結婚したんですか?
 …勘。
息子 そうかあ…、ええと、僕の本当のお父さんは、どうしてお母さんと結婚したのかなあ。

 水が飲みたい。
息子 どうやったらいいかもう分からない。
 そうかい?

 それだけか。
息子 えーと、そうですね、今日はこれくらいにしときましょうか。また明日から、追々、いろいろと訊かせてもらいますよ。
 明日は忙しい。
息子 忙しくてもね、関係ないというか、僕はね、聞きたいなあ。ていうか、忙しい忙しいって言ってさ、何処に行ってるのお父さんさあ。…お父さんはお母さんをほっておいて何処に行ってるの?
 そんな事を君に答える必要はない。
息子 どうするのかなあ、明日から。
 明日からは答えない。
息子 ふーん。…ま、それはそれでもいいけどね。

息子 それじゃ僕は今日はもう寝るわ。

息子、去る。

 殺すか…。

父も去る。
レポーター現れる。

レポーター みなさん今晩は。今夜のクローズアップゼンザイは、皆さんもお待ちかねの通り、二人羽織り人間国宝の方をお招きしました。先生、どうぞ。

人間国宝達、現れる。勿論二人羽織りをしている。

レポーター お待ちしてました。どうぞお座り下さい。
人間国宝 (身振り。この身振りが相当面自いのだが、残念ながら音からだけでは、分からないし、分かっても文章では再現不能である)
レポーター 先生。
人間国宝 (身振り)
レポーター 一言。
人間国宝 あー。(身振り)やっほー。(身振り)
レポーター 先生、早速ですけど、自己紹介をどうぞ。皆さんに。
人間国宝 自己紹介。(身振り)
レポーター はい。
人間国宝 私が、(身振り)二人羽織りの(身振り)人間コクホー!(身振り)の、人です。(身振り)
レポーター 先生、今日は先生と楽しいお話、楽しみにしてますのよ。
人間国宝 楽しい話なんて、ねえ。(身振り)
レポーター いや、つまらない話でもいいですけど。
人間国宝 あ、つまらない話でいい?(身振り)つまらない話なら、沢山あるよお。(身振り)
レポーター そうですよね。
人間国宝 うん。どれくらいつまらない話がいいかな。(身振り)
レポーター うーん、やっぱり先生、御飯食べたあとに、
人間国宝 うん。(身振り)
レポーター 大福は欠かせませんよね。
人間国宝 大福は欠かせないねえ。(身振り)
レポーター うーん、やっぱり、あまーいアンコが一番――
人間国宝 僕が一番好きなのはあ、(身振り)中唐飯店[ちゅうからはんてん]の、(身振り)カレー大福かなあ。(身振りが逆らう)
レポーター 中唐飯店というのはお店ですか?
人間国宝 中唐飯店?うん。お店の名前や。(身振り)中の「から」て(身振り逆らう)あの、(身振り逆らう)あの「唐」や。あー、隋とか唐とか、あの「唐」ね。(身振り逆らうのをやめる。)
レポーター 隋とか唐?
人間国宝 うん。
レポーター 唐?
人間国宝 中唐飯店。
レポーター あー、それは、辛いものなんですか?

人間国宝 ん?(身振り)ちょっとねえ、(身振り)おなかがすいてねえ。(おにぎりを出す)
レポーター ああ、お腹がすいてるんですか。
人間国宝 うん。(身振り)
レポーター 実は私もなんですよ。
人間国宝 あ、食べる?
レポーター 有り難うございます。いいのかしら。
人間国宝 あ、いいよいいよ。(身振り)もう一個あるし。(食べる)
レポーター ああ。
人間国宝 飲む?(水筒を出す。後の身体役が顔を出し、飲む)
レポーター すごい、美味しいです。
人間国宝 美味しい?えー、それ、何辛位やと思う?
レポーター 全然辛くなーい。
人間国宝 え、おかしいなあ、何辛位やと思う?
レポーター え?、何辛も…、ちょっと塩が足りない位ですねえ。
人間国宝 ちょっと塩が足りない?
レポーター それが美味しいんですよ。
人間国宝 んん?おかしいなあ。間違えたかなあ。確か、ちゃんと米10g当たり、塩を…、ごめんねえ、ちょっと。(身振り)
レポーター 何がでしょう?
人間国宝 え?何か眼鏡が汚れたみたいなんで。(後の身体役が前の顔役の眼鏡を取る)

レポーター 大丈夫ですか。
人間国宝 まあ、今は眼鏡無しでいくわ。うん。(眼鏡をたたんで胸元にかける。後の身体役が顔を出し、おにぎりを食べる)
レポーター このあつかましい先生の御飯を、えい。(殴ってる)
人間国宝 その中に、どの位の辛味が詰まってると思う?
レポーター いや、だからこれは辛くないですって。
人間国宝 ん?
レポーター いや、美味しかったですって。先生の勘違いです。
人間国宝 からみやで。
レポーター 辛味全然なかったですよ。
人間国宝 ほんまに?うそやーん。
レポーター 本当ですよ、先生――
人間国宝 違う、僕とあんた、からんでるがな。

レポーター あ、そういうことか。OKOK。
人間国宝 ああ。
レポーター それでね、先生。
人間国宝 はいはい。
レポーター やっぱり朝御飯て、お味噌汁で御飯て、考えられませんよね。
人間国宝 味喀汁と御飯?、あれは、いいねえ。
レポーター やっぱり善哉と御飯ですよねえ。
人間国宝 え?、善哉で御飯ん〜?
レポーター やっぱり朝から甘い物食べないと、一日しゃきっとしないんですよお。
人間国宝 一日しやきっとおー?、ぜ、善哉で御飯て、あんた、それはやねえ。
レポーター いけませんか?
人間国宝 ……。
レポーター でも、先生もそうなさってるんじゃないんですか。
人間国宝 あんた虫歯何本ある?
レポーター いや、虫歯…、数えたこと無いですけど。
人間国宝 数えたこと無い?、数えきれへんほどあるんやね。あーあ、せいぜい28本とか32本とかしかないと言うのに、数え切れないほど虫歯がある!、それは凄いことやん。
レポーター でも甘いもの食べたからって虫歯になるとは限りませんよ。歯磨きしっかりすればいいんです。
人間国宝 歯磨き?、うん、まあしっかりすりゃあねえ。うーん。
レポーター 何ですか?私に恨みでもあるんですか?
人間国宝 恨み?、いや、そんなもん無いよ。
レポーター あ、これお返しします。(おにぎりを包んでいたラップを返す)
人間国宝 ん。
レポーター あ、こうね。ごちそうさまでした。

ここで笑いがあったが理由はよく分からない。

人間国宝 ん?、何か?
レポーター まあ先生、やっぱり――
人間国宝 やっぱり何?
レポーター カレーとかそんなん、とてもじゃないけど食べられませんよねえ。
人間国宝 いやカレー好きやねえ。
レポーター この世の物とは思えませんよねえ。
人間国宝 カレー大福がいいって、だから先刻から言ってるやんか――
レポーター ようあんな不味い物みんな食べると思って。
人間国宝 ああ〜。何でえ、もう〜〜〜!
レポーター え、何か怒っていらっしやる?

人間国宝 いや。
レポーター いや何かまずいこと言ってるかしら。
人間国宝 いや。
レポーター そんなことないですよね。
人間国宝 うん。いや、今あんまり顔見えてへんし。うん。
レポーター え?
人間国宝 何やったら眼鏡かけよか?
レポーター ああ、どうぞかけてください。
人間国宝 ん?、眼鏡かけるよお。
レポーター ああ、どうぞかけてください。
人間国宝 (眼鏡をかけようとしてるのか)
レポーター 先生眼鏡は?
人間国宝 ん?

前の方が自分の手を出してかけてしまう。瞬間的に手が三本。

レポーター いや、もう、手品やってえ。
人間国宝 はははは、分かってもらえた?
レポーター もう素晴らしいわ、人間国宝って。流石ですよねえ。
人間国宝 うん。
レポーター 人間国宝ってやっぱり違いますよねえ。そこまでやらはんのや。
人間国宝 そらそうやがな。
レポーター わーすごおーい。
人間国宝 うん。で、何?、今日は僕に何サービスしてくれんのかな。
レポーター サービスは無いですよ。
人間国宝 え?
レポーター 先生の、食生活を色々と間きたいなー、と。
人間国宝 しょしょしょ、食生活?
レポーター 吃ることじゃないと思うんですけど。
人間国宝 吃る、吃るも何も食生活なんて。
レポーター やっぱり色々食生活を聞けぱ、先生の人となりと、
人間国宝 人となり。
レポーター うん、そういうのが良く分かると思って。
人間国宝 となりにおるのはあんたやでえ。
レポーター いや、あたしですけど。
人間国宝 何か感じ悪いな。
レポーター えええええ?、どうしてですか?、打ち解けたんしゃないんですか?あたしのこと好きだからおにぎりくれたんじゃないんですか?、やっぱり根にもってるんですか?、じゃあくれなきゃいいじゃないですか。
人間国宝 ん、ん、…なんや、うるさいこと、言わはるねえ。
レポーター 私だって、渡されたから食べただけで――
人間国宝 渡されたから食べただけ?
レポーター だって断るの矢礼でしょう。
人間国宝 美味しいから食べたんちゃうんかいな。
レポーター 美味しいかどうかは食べてみなきゃ分からないでしょう。
人間国宝 何い?、せっかくやねえ、せっかくやねえ、持ってきて。
レポーター ×××ってきたのにい。
人間国宝 え?、…話にならんなあ。
レポーター そっちこそ。
人間国宝 んん?
レポーター あそうなんやあ。
人間国宝 うんっ。
レポーター …というわけで、時間もそろそろ押してますので、今日のクローズアップゼンザイは、ここで終わります。皆さん、来週をお楽しみに。さよなら。

人間国宝 ふん。どういうことや。
レポーター ということで、撮影は終わりました。
人間国宝 終わったからって、どういうことや!
レポーター どういうことかどうかは、あたしのリーダーに聞いてもらいます。
人間国宝 リーダー?、な、何やそれは?
レポーター 何やそれはって、リーダーはリーダーよ。
人間国宝 あしすたんと、でぃれくたーとか、そんなんか?
レポーター そんなちゃちなもんじゃない。
人間国宝 ちゃちなもんと達う?
レポーター いや、凄いから。あたしのリーダーは。
人間国宝 どんな凄いんや。
レポーター すっごいから!
人間国宝 えええ?、これくらい凄いの?
レポーター いやもっともっともっと。
人間国宝 もっと?
レポーター いや、ていうかもう――
人間国宝 ということは、(何をしているのか)これくらい?
レポーター あなたとは、話にならない、そんな話にならない位。
人間国宝 ちゅうことは話になっとるやろお。
レポーター いや、話にならないんじゃなくて、話にならない位、うちのリーダーは凄いんですよ。
人間国宝 はあ?
レポーター も、もう凄いんですよ、本当に。
人間国宝 話にならないって、あなた虫歯かいな。
レポーター いやそうじゃなくて、もう。
人間国宝 ん?
レポーター 凄いんですよ!、リーダーって。そのうち来ると思うんですけど。
人間国宝 そのうち?
レポーター もう一目見て分かります。
人間国宝 一目見て分かる。
レポーター あ、もう、凄いっ!、って。
人間国宝 そう。

ピアニカによるジャジャジャジャーン。

人間国宝 ん?何だ何だあ?
レポーター 来たみたい。ふざけていられるのも今のうちですよ。
人間国宝 今のうちだけ?
レポーター もう血を見るから、凄いからもう。
人間国宝 何が凄いって?
レポーター 凄いから。
人間国宝 凄いから?

ゴゼンジャイ・レッド(リーダー)とブルーが現れる。

リーダー そこまでか。

人間国宝 おたくどちら?
リーダー すいませんが、リーダーです。
レポーター っていうか、リーダー…もう。…ったらあかんってば。

人間国宝 あのう、凄いんですか?
リーダー あなたの方が、凄い。

レポーター ま、こういう――
リーダー でも真似したくない凄さだ。
人間国宝 真似したくない凄さ?…、それはやっぱり、喜ぶべきことかな。
リーダー 僭越ながら、自己紹介させてもらっていいですか?
人間国宝 ああ、どうぞどうぞ、自己紹介。
リーダー じゃあ、行かしてもらいます。
人間国宝 はい。

リーダー 赤ゼンジャイこと、『こだわりの赤』!
人間国宝 こだわりの赤、はいそれから?
レポーター 提灯持ちのピンク!
人間国宝 提灯持ちのピンク、はいそれから?

ブルー 憂鬱のブルー。
人間国宝 ブルースね、それから?
リーダー そして後ろにいるのが、
人間国宝 後ろにいる?後ろ?、ん?、ん??

二人羽繊りで後ろに入っていたグリーンが、出てくる。

グリーン 暑いし臭いわ!、…ヘロヘロのグリーン。
イエロー (出てきて)そして、きききききーの、黄色?…これで、いいのかなあ?
リーダー 台無しだ。
イエロー 何だったんだ俺の努力は。
リーダー うん。五人合わせてゴゼンジャイ!

人間国宝 ああ。
グリーン もう終わりですか?!、凄い全部見殺し、ボケ殺しだなあ、おい!、なんだ何だよおい。…で?
リーダー いよいよ見つけたぞ、辛十字総統。
人間国宝 …唐十郎?
リーダー そういう誤魔化し方をするのは辛十字軍だけだ!
人間国宝 何で?
リーダー 普通の人はそんな名前は知りません!
人間国宝 いや、2、3人は知ってると思うんやけど。
リーダー それは普通じゃない。

人間国宝 それで、何?、私に6人目になれと、そういうこと?、…ほなったら色は白でいいよ。
リーダー ちょっと待て。何で偉そうなんだ。
人間国宝 え?
リーダー 何で偉そうなのか。
人間国宝 そら6人目になってもらいたいって頼みにきたんでしょ。
リーダー …日本語通じるか。
人間国宝 大丈夫。
リーダー 話を続けるぞ。
人間国宝 どうぞ。
リーダー お前は辛十字総統だ。
人間国宝 なんだそりゃ。
リーダー もしお前が辛十字軍でないなら、我々の攻撃が
人間国宝 攻撃が、
リーダー 全然平気なはずだ。
人間国宝 はあ。…平気よ。
リーダー それは攻撃してないからだ。
グリーン リーダー、何もしてないけど押されてます。
リーダー そうだな。
グリーン 攻撃されてませんので頑張って下さい!
ピンク 加減しなくていいから。
ブルー リーダー。
リーダー んん?
ブルー 例の攻撃をやるんですね。
リーダー そうだな。

グリーン うりゃ。(羽交い締め)お前の背中はもう慣れたもんだ。
人間国宝 あ、また二人羽織りやってくれるの?、ん?
ブルー 貴様、カレー大福が太好きだそうだな。じゃあ、カレーか大福か、どっちがいい?
人間国宝 かか、カレーか大福かどっちがいい?、…え、それは、…やっばり、うん、カレーかなあ。
ブルー じゃあ、(とレトルトカレーを取り出し)お前の好きなカレーを持ってきた。しかも熱辛だ。
人間国宝 熱辛。
ブルー これを…。(下に落とす)
人間国宝 ああもったいない。
リーダー これを踏んでもらう。
人間国宝 踏む?
リーダー お前が辛十字軍でないなら、こんなのは平気で踏めるはずだ。
人間国宝 辛十字軍であるとか無いとかじゃなくて、食べ物は粗末にしたらあかんてお母さんに教わったやろ。

リーダー 教わって無い!…さあ踏め。
人間国宝 ……
グリーン ちなみに俺たちゴゼンジャイは平気で踏めるぞ。リーダーお願いします。
イエロー え?、ちょっと…、あ。
人間国宝 ヘイキで踏めるって、あんたの足は兵器なんか?
リーダー えーとすまん、あの、うるさい。(殴る)

ゴゼンジャイの面々、次々とレトルトカレーのパックを踏みつけてゆく。

イエロー (踏めずにとまどって)ええっ。…ゴ、ゴゼンジャイの甘いものへの愛ってかなり歪んだものだったんだ。
人間国宝 ああっ…。
グリーン 当然私も踏める。イエローだって、なあイエロー。
イエロー え?…、やっぱり、食べ物を粗末にするのはいけないでしょう。
グリーン 何を言ってるんだ。
イエロー ねえ。
グリーン まあいい。踏め。
人間国宝 わわわわわ分かった分かった分かった、…踏もう。その前にちょっと椅子に座らせてくれ。
グリーン いいだろう。
人間国宝 踏むんだな。
リーダー ああ。
人間国宝 分かった…(もぞもぞと靴を脱ぐ?)
リーダー 何すんだ!
グリーン 何してるんだ!
人間国宝 え?、…靴なんかで踏んだら、駄目じゃ…、せめて踏むなら――
リーダー ああ、めんどくさい、(指示する)

ブルー、グリーン、ピンク、無理やり人間国宝に踏ませようとする。

グリーン 往生際が悪い!
人間国宝 あああああっ。
イエロー か、カレーに何するんだ!(駆け寄る。カレーを奪い、人間国宝=辛十字総統を救う)…あっ、しまった。根っから辛い物好きなのがばれてしまった!

リーダー いやお前がばらした。

ブルー イエロー、どういうことだ。
イエロー 熱辛だから根っからだ。
グリーン いや、そういうことを聞いてるんじゃない。違う違う。論点がずれている…何をやってるんだ、そいつは辛十字総統だぞ!
イエロー そうだ。当たり前じゃないか。俺は辛十字総統の部下だったんだ!

 え。(驚く)
イエロー 俺はスパイだったんだ。
ブルー すっぱい?
イエロー 辛いだって言ってるだろ!
グリーン やるじゃないか、お前。とんでもない事したんじゃないか?、今何か冒涜しただろ!
イエロー …俺は、辛十字総統の、部下としてお前たちの本拠地に乗り込んで、お前達の大事なデータを全てメモしてきてやったぜ。
総統 部下の、スパイだー、マン。

誰か突っ込んだような気配があるが、よく分からない。

グリーン こんな奴がスパイだなんて!、畜生、リーダーどうしましょう。
リーダー まあ4対2だ。
グリーン いや、そういうことなんすか?!、造反者が出ても全然いいんですか。
リーダー 勝負がつくだろ。
総統 4対2ってことは、こっちのほうが強いのか?
リーダー 何でだ!
イエロー ふ、私は全て調べさせてもらったと言っただろう。4対2になるなんて事はお見通しだ。
ブルー どういう意味だ。
イエロー どういう意味って、言った通りの意味じゃん。4対2になることはお見通しなんだよ。
ブルー お見通しだからどうなるというんだよ。
イエロー お見通しだから、強力な味方を呼んである。
ブルーグリーン 何!
イエロー  この、世界に広がる、辛十字軍ネットワークの中から、今日はヨーロッパ本部長と南米本部長を呼んである。…ヨーロッパ本部長どうぞ!

ヨーロッパ本部長らしき男、現れる。どうも先程のメシアのようでもある。

ヨーロッパ (甲高い声で)「アアアアア!、助けてエエ!」「んっふっふっふっふっふっふ。」「貴方、腕に持ってるのはなあに?、それは只の三角布じゃないわね。うっ…それは、八つ橋ね!」「ソンナコトナイョ!」「何を言ってるの、こんなとこ、中身にアンコが入ってるじゃないの。アアアアアアアアアアア!ブルブルブルブルブルブルブルブル、ヨーロッパ産のコネクタ(電気のコンセント。日本のコンセントとは形が違う)で貴方をビリビリにして差し上げるわ。」「き、きゃあああ。」―よっこいしょ。(コネクタを繋ぐ)「あああああっ」

こうだ!

リーダー ぜんぜん分かんねえよ。
イエロー …南米支部長どうぞ!

南米支部長現れる。コートに眼鏡の普通の人である。

南米 私は普通です。
リーダー 何か勝ち目が広がってないか?
イエロー そんな事はない!、これで4対4だ。

リーダー いや、楽勝だと思うぞ、俺は。
グリーン 俺はこっちに行く。(辛十字軍側に)
リーダー 何でだ!
グリーン 何かこっちの方がいいかなと、これからの事を考えると。トラバーユです。…どう?
リーダー 本当にいいのか?
グリーン やっぱり止めときます。
リーダー うん。
グリーン (元に戻って)すごいなお前たち、人数は増えたがボリュウムは減ったなお前たち。
イエロー それは見た目だけの問題だ。
リーダー 見た目じゃないだろ。
グリーン まあいいだろう、4対4か。リーダー勝負ですね。
リーダー そうだな。
イエロー 驚くなよ、俺たちの必殺技を受けて。俺たちのていうか、チームプレイは無い。…けど、いいか、俺たちが勝ったら、お前ら全貫皆殺しだ。
ヨーロッパ そうだ。
総統 そうだ。
南米 そうだ。
イエロー 俺たちが負けたらデコピンだ。
グリーン 何でだ!、お前たちも何か、自害ぐらいしろよ!

リーダー 分かった。その代わり、泣いちやうぞ。
辛十字軍 …。

リーダー 痛いぞ。
南米 泣かしてやるこの野郎。
リーダー 三日三晩デコピンで泣かしてやるぞ。
南米 長い人生のうちの三日三晩じゃないか。
総統 そんなにつきあってくれるのか?
ヨーロッパ すごいボケだな。
グリーン 押されてます。
イエロー すでに勝負は始まっている!
グリーン まあそうだろうなあ、ぜんぜん油断出来ない状況だからな。こっち(辛十字)にもこっち(リーダー)にも気をつけなきゃいけないんだ俺は。
イエロー …ようし、受けてみろ、んやああああっ!

双方、気で勝負する(つまり、じっとして気張っているだけ)。

グリーン こ、これが噂の、膠着状態。

しばし、じっとしたまま。

耐えきれなくなって、双方、カを抜く。

グリーン …中々やるな、辛十字軍。
ブルー ていうかリーダー何もしてないし。
リーダー まだ私の出番じゃない。
イエロー 購着状態か…。
グリーン どうしましょう。
イエロー 90分戦って引き分けか、更に延長30分戦っても引き分けか。
リーダー いや、戦ってないから。
グリーン それくらいの疲れはあるな。どうする!
イエロー 当たり前だろう、前半後半終わって、延長前後半が引き分けだった場合は、PK合戦だ。
南米 うん。
ヨーロッパ そうだ、PKだ。
総統 PKっていうと、ペルーのキトーの略か。

総統、突っ込まれる。そもそもキトーはエクアドルである(調べた)。

ブルー あいつら仲間割れしてますね。
グリーン パーソナル・岸田今日子。

リーダー 4対3対1だ。
南米 見なさい、これが流すっていうことだ。
グリーン スルー、スルーだ。
南米 辛いだろう。
グリーン 味方いねえじゃねえか。
南米 夢に出る。
イエロー さあどうだ、ペナルティ・キック合戦、受けて立つのか!、ボールは何処だ!
ヨーロッパ こっちだ。(ビーチボールを出してくる。)
グリーン もうバラバラだな、お前たち。どうします、リーダー!
リーダー 受けて立たなくてもいいのか?
イエロー いや欧目だ。
グリーン リーダー逃け腰は止めましょう。
総統 なあ、座って受けてもいいの?

南米が総統の後頭部をどつく。

グリーン ちょっと待って、そいつは総統じゃないのが?、相当非道いことされてるぞ。
ヨーロッパ まあ、総統だから。
リーダー それはちがうやないかー。
グリーン いいです、もういいです。喋らないでください、もう。
ブルー (ボールを指し)これをどうするんだ。
南米 蹴るんだ。
イエロー 当たり前じゃないか、蹴るんだ。ゴールに入れるんだよ。
南米 うん。
イエロー その際に、普通のPK合戦じゃ面白くないから、言葉をそえよう。
ヨーロッパ そえよう。
総統 うん。
イエロー 言葉をそえるんだ。
南米 そえる。
イエロー で、その言葉でもって、ゴールキーパーを打ちのめして、…ゴールにボールを入れてもよし。

南米 そうだ。
ヨーロッパ そうだ。
グリーン そのまま頷いてるだけだぞ。
イエロー …言葉をゴールに入れてもよし。面白かった方が勝ちだ!
ヨーロッパ そうだ。

リーダー ボールは必要か?
グリーン さすがリーダー、こっちへ戻ろう。ああ良かった良かった戻る場所が出来たよ。
イエロー 必要だ。
南米 形は大事だ。
ヨーロッパ そうだ。PKだからな。
イエロー そっちはボールなしでやってもいいぞ。きついぞ。
グリーン もう既にだいぶきついぞ。…いいだろう、受けて立とう!
イエロー ようし。
ブルー ようし。
イエロー 先攻後攻のジャンケンだ。
グリーン ちょっと待て、お前だけがジャンケンしろよ!

イエローグリーン じゃんけん、ほい!

グリーン 負けちゃったよ。
イエロー 後攻だ。
グリーン 何でだ。負けた気がしないな。先攻か、うちが。
イエロー そうだ。
グリーン リーダー、先攻になりました。
リーダー ようし、じゃあ私から行こう。
グリーン 流石!…あれか、これ4人いるが、1人キーパーで3人だから、2つ取ったら勝ちだな。
南米 うん、そうだな。
グリーン いいだろう、いいだろう、リーダーお願いしますよ!
イエロー ようし、こい!
リーダー ええっと…、ハリウッド映画シリーズ。『危険な情事』に続く第二弾。…『危険なジョージ・ブッシュ』
イエロー 笑えねえよ。
リーダー こういうことじゃないか。
南米 文字通り笑えないね、それは。
グリーン タイム!、タイム!、タイム!

ゴゼンジャイ、集まってこそこそ話す。

リーダー どうしよう…
グリーン あ、ていうか、お前外れろ。
ブルー どうしよう。
グリーン 今の、無かったことにできないのか?
リーダー …
ピンク そうでもないんちゃう、案外したら…、

南米 で、そっちは。
グリーン OKです、OKです。
イエロー ああ。
グリーン で、次は、うちが守るんだな!
ヨーロッパ そうだ。
グリーン 誰がキーパーにしよう。
ブルー やっぱりピンクじゃないか。

ピンク、キーパーになる。

ヨーロッパ すげえな。
グリーン すごいぞ、うちのキーパーは。いろんな物取れちゃうんだぞ、お前。
ヨーロッパ 知ってる。

ヨーロッパ (蹴る準備をしつつ)さっきジョージ・ブッシュ言ったから、そうとうネタがかぶりそうなんだよ。…最近、ジョージ…、元ビートルズのジョージ・ハリソンさんが亡くなりましたね。ジョージ・ハリスンさんを偲んで、ジョージ・ハリスンさんのネタをいきます。
ジョージ・ハリソンさんが、あるホテルで、泊まりました。横の部屋で、物凄い戸が聞こえてきました。「アアア!」…他のビートルズの3人はとても戸惑ってます。ジョージ・ハリスンは、…ジョージ!、はリッスン。

キーパーは無反応。

総統 あのキーパーには、この手の高尚なのは通じないんだ!
ピンク どういう意味よ!、それは。
総統 全然分かっていないに達いない。
ピンク どういう意味よ!、それは、…負け借しみ、負け惜しみ。
グリーン くそう、もう後が無くなってしまった!、畜生、どうしよう。
イエロー 今のは…
リーダー グリーン行くか。
グリーン 分かりました。ここは私が何とか止めましょう。
イエロー ようし!、いいぞ。
グリーン もう一つ、シャレにならないネタでいきましょう。
イエロー 今日は、2連勝で決めてやるぜ。
ブルー シャレにならないネタ多いなあ…。

グリーン いやー、殿下にお子様が出来て、本当に良かった。お名前はどうしよう。…考えてなかったな。我々で考えよう。誰が考えたい?…はーい、はーい、…じゃ、君達ジャンケンして決めなさい。…最初はグー、ジャンケンホイ、…アイコでしょ。

イエロー ええ!?、…やられたあ。
ゴゼンジャイ やったあ!
グリーン イエー!
ヨーロッパ 何か座蒲団一枚って感じだな。
南米 うーむ。
イエロー 畜生。
グリーン ようしこい!、感心してもらっても困るんだ。

南米 どうしますか。
イエロー 総統だろう。
総統 うーん。
南米 え、そう、そうなのか?…、まあいいけど。
総統 もう今日は力ずくだ。
グリーン あぶない総統だ。
ヨーロッパ ちょっと待った…
総統 力ずくだ。
南米 いつもそうじゃねえかよ。
総統 いくぞ!…、アンだけ、こんだけ、アンコだけ!

グリーン ようし、これで同点に追いつきました!
リーダー うーん、同点なのか。
ピンク 同点。
グリーン これで最終決戦だな!
南米 何だったんだ今のは畜生。
グリーン これで取った方だな。
ヨーロッパ 総統、僕は好きです。
ブルー じゃあ、私か。
グリーン 頼むぞ、大事だぞ、殺されちゃうんだぞ、俺たち!
イエロー よし来い!

ブルー ブラームスの、ハングリー舞曲。…♪二ーラレーバ、たーべたいー…
グリーン いやー、ナイスゴールだ!、(拍手)ようし、相当なゴールが来ない限り勝てるな、これは。いい流れになってきたぞ。
イエロー 打ちのめされたあ。
南米 最後はあれだな、腐れインテリ対決みたいになってきたぞ。
イエロー 南米支部長、私のミスをカバーしてください。
南米 えー、江戸時代の後期に、アメリカ帝国主義に反対して立ち上がった国学者がいました。本居ノリエガ。

リーダー 勝ったあ。

宣長は日本文学研究者のアイドルなのだが…

グリーン 僕も今のはよく分からなかったんだけど、…勝ったんでしょうか?
リーダー 勝ったんだ、うちの勝ちだ。
グリーン ようし!
南米 じゃ、負けか。
ヨーロッパ ハハハ。
グリーン 全員デコピンだぞう。
イエロー ちくしょう!
グリーン いいか。
イエロー させないもんね。
グリーン それだったらルールが、約束が違うじゃないか!、お前。
イエロー やれるもんならやってみろこの野郎!
南米 約束なんか守らないんだよ畜生。

再び、気の送り合いのみでの戦いとなる。

双方 はあああああっ!でやああああっ!ふんっ!

しばしして。弛緩。

リーダー また膠着状態か。
イエロー 何の為にPK戦があったんだ。
南米 それはあの考えてきたネタを言うため。
ヨーロッパ そうそう一応。
イエロー ち、ちょっと待って。何か、
南米 降ってきたぞ…

赤いものがちらちらと空から降ってきている。

ブルー これは…
イエロー ええっ?
ヨーロッパ これは…、ぜんざい…

静かでメランコリックな音楽が聞こえてくる。

ブルー 小豆は…、洗い、…一晩水に漬けておく…

南米 それに、豆がかぶるくらいの水を加え…

グリーン ことことと、豆がやわらかくなるまで煮る…

総統 小豆がすっかり柔らかくなったら、煮汁をひたひたになるまで捨て、

ピンク 砂糖を加えて、ひと煮立ちさせ、火を止める…

イエロー そのまま一晩おいて、甘味を豆の芯までいきわたらせる…

リーダー 再びそれを火にかけて、…塩を加え、好みの甘さに調節して煮立てる…

全員 口直しに、辛いものを添えて。

赤いものが降りしきる中、ゆっくりと溶暗。
おしまい。

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