第7回やみいち行動、上演の記録

第7回やみいち行動   (199912/12 19:00〜ソワレ)
『アンコく街の顔役』
登場人物

シルフォンス・コポネ(ボス)………………藤原康弘
チョビエーリ・チョビエリー二(部下)……桶雅景
コシアン・コルジオ(部下)…………………池田一平
アンコニオ・フケンコウ(部下)……………鬼豚馬
ホッペターニョ・フックラーニョ(部下)…吉本和孝
 

おしるこのお姉さん……広田ゆうみ

また、蓮行氏、桐山泰典氏はお客さんとして会場にいた。

場所

マフィアの隠れ場所のようなところ。
(上手にドアが一つある。)

激しい音楽。

スライドタイトル。『やみいち行動』

物哀しい音楽。

スライド。古き時代の数々の写真

ナレーション これは昔、本当の人間らしい生き方があった頃、それを求めて闘った男達の記録である。

スライドタイトル。『アンコく街の顔役』

明転

舞台上に役者がスクリーン(牛乳パックで出来ている)を客席に向げて広けながら立っている。
コポネ、登場。スクリーンの前に立つ。

コポネ おーッス!

元気がないな、もう1回だ。

おーッス!

皆さんがここでいきなり私にここでこうおーッスと言われても、答えにくい気持ちはわかる。しかし心の中ではおーッスと答えてくれた人もいるだろう。そんな、心の中でおーッスと答えてくれた全ての皆さん。
年は取りたくないですねえ。

…さて、私、シルフォンス・コポネと申します。時は1927年、所はアメリカ・シカゴ
私はこのシカゴにおける、しるこの密造王である。1927年といえば、皆さんもようくご存知の通り、アメリカは禁しるこ法時代の真っ最中だ。禁しるこ法とは何か。しるこを食べてはいけないという法律だ。何故しるこがいけないのか。
…太るからだ。だが、人間はなんのためにこの世の中に生を受けそして生きていくのか。
…太るためだ。日本の諺でも古くからこう言うではないか。
祗園精舎の鐘の音、諸行無常のしるこあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰のおしるこをあらわす。

このような、人間として当然の権利が踏みにじられている今の時代のスライドをもう一度見てもらおう。

(スライドが始まる。)

これは、私の部下のしるこ密造員が、しるこ捜査官に捕まって列車に乗せられて送還されていくスライドだ。

これは、このあたりを見るとよくわかるのだが、樽がたくさん転がっている。これは私が密造したしるこだ。密造したしるこが押収されて、しるこ捜査官によって樽が叩き割られている写真だ。

これは、このあたりをよーく見て…しるこ…しるこ…しるこ…と書いてあることからもわかるように、これは、船の底だ。二重底にした船の底でしるこを密輸していたのだがそれが見つかってしるこを押収されている写真だ。

これは、街でしるこ捜査官が見せしめのために押収したしるこをどぶに流している写真だ。

以上。

(スライド終わり。)

私はこのような時代に人々に禁断のしるこを届ける闇しるこ事業をはじめることで巨万の富と権利を手に入れた。しかし、あまりにもその権利と富が巨大になりすぎたためどうやらFBIは本気で私を逮捕しにかかっているらしい。あんタッチャブルという秘密組織がFBIに結成されたと聞いた。あん…タッチャブル。私が思うにこれは、あんこにタッチしろという意味だ。これはつまり私を逮捕しろ、ということに違いない。

しかも私の部下の中にもどうやらスパイがいるらしい。おとり捜査官とか、そういったものが潜りこんでいる可能性がある。そこで私はこの一日五万キロリットルのおしるこが製造可能な巨大なしるこ工場を今まではわけあって閉鎖していたのだが再開することにした。これは、おとりだ。このおとりにひっかかって必ずやFBIは捜索を行うに違いない。しかもここの工場の各セクションの責任者には私の組織の中でもとびっきり怪しい奴を集めておいた。これで本当に私の忠誠なる部下と裏切り者がはっきりするはずだ。

この暗黒街でコポネ様にさからったらどうなるのか思い知ってもらわねばならない。

…あっ、もうこんな時間だ。礼拝に行かなくては。私ほど敬虔な人間はいないというのに何故人々は私を暗黒街の帝王などと呼ぶのか…

それでは、運転手のホッペターニョ・フックラーニョを呼んでみよう。ホッペターニョ・フックラーニョ。

ホッペターニョ はい。
コポネ 車をまわせ。
ホッペターニョ はい。
ボス用意できました。ボス今日はどこへ行くんですかい?
コポネ 礼拝堂だ。
ホッペターニョ 礼拝堂?
コポネ 礼拝堂だ。
ホッペターニョ お菓子屋さん?
コポネ …礼拝堂だ。
ホッペターニョ 礼拝堂っていうと、教会のことですかい?
コポネ そうだ。
ホッペターニョ ははーん、また昼寝ですかい?
コポネ …ホッペターニョ。
ホッペターニョ はい?
コポネ 長い付き合いだったな…

(コポネ銃を取り出す)

ホッペターニョ いや、うっ…
コポネ 俺様をそういう風に愚弄する奴は俺様の組織にはいらねえ。
ホッペターニョ 昨日は笑ってたじゃないすか!何でそんな気分で!
コポネ 思い残すことはないか?最後の一言を聞いてやろう。
ホッペターニョ じゃあ、一つだけ…
祗園精舎は、煉瓦造りなんだぜ…

(コポネ引き金を引く。カチッカチッ。弾が出ない)

ホッペターニョ ボス…カッコ悪いよ。
ボス!ボーーーーース!
コポネ まあ待て。
ホッペターニョ 待ってやるよ。

(カチッ。やっぱり弾が出ない)

ホッペターニョ 茶番はそれくらいにして出かけますかい?
コポネ そうだな。暗転してもらおうか。

(暗転、そして明転。舞台上には男が2人。ポーカーをやっている。)

チョビ ふーん。
    まあまあじゃねえか。
    3枚交換だ。
コシアン 俺はこれでいい。
チョビ いいだろう。行くぞ。スリーカードだ。
コシアン ロイヤルストレートフラッシュだ。
チョビ 信じらんねえ…もう一勝負だ。

(チョビ上着を脱ぐ。)

コシアン 悪いな。
チョビ ところで…お前聞いてるか。
コシアン 何をだ。
チョビ FBIだよ。
コシアン FBI?
チョビ ふとり捜査官が入ってるって噂だ。
コシアン それは…おとり捜査官のことじゃないか
チョビ …そうだ。お前さんきいてねえのか。
コシアン しらねえな。
チョビ 結構な噂になってるみたいだぜ。
うーん。いい感じじゃねえか。
1枚だけ交換だ。
コシアン 俺も一枚だ。
これでいい。
チョビ いいだろう。行くぞ。
コシアン おお。
チョビ ツーペアー。
コシアン ストレート。
チョビ チキショウ。もう一勝負だ。

(チョビワイシャツを脱ぐ。どうも、脱衣ポーカーらしい。)

コシアン 悪いな。
チョビ よく切れよ。…しかし何だな。
コシアン ん?
チョビ この馬鹿でけえ工場に呼び出されてるのが2人だけってのが、また、変な話じゃねえか。
コシアン もしかしておめえ疑われてんじゃねえか?
チョビ 馬鹿言うな。
…んー、まあまあだな。
3枚交換だ。
コシアン 俺はこれでいい。
チョビ 強気だなお前…いいだろう。ツーペアーだ。
コシアン スリーペアーだ。
チョビ チキショウ。どうなってんだ。

(チョビズボンを脱ぐ。ドアにノック。ドンドン。)

アンコニオ 牛乳パック回収人の、アンコニオがやって参りました。
チョビ いいタイミングだ。
アンコニオ いいかな。
チョビ おめえさん、何だ。
アンコニオ チキショウ、やられちまったよう。43丁目の角で…
チョビ う?うなぎ。
コシアン ぎ、ぎんがみ。
アンコニオ み?みことのり。
チョビ り、リップサービス。
コシアン す、するめ。
アンコニオ め?めだか。
チョビ 間違いない。こいつは本部からの連絡人だ。
アンコニオ やっとわかってくれたかあ。
それで聞いてくれよ!42丁目の角の所でゼンザイーノ一家の奴らにこんな目にあわされちまった。

(眼鏡のレンズの上の部分に、お弁当に入っているプラスチック製の竹の皮が貼られている。緑色の変な眉毛みたいに見える。)

コシアン お前黙ってやられてたのか?
アンコニオ だって2人がかりで羽交い締めにして
チョビ 2人で羽交い締め?
…そりゃあ効率が悪い。
アンコニオ 奴らは…ゼンザイーノ一家の奴らは、馬鹿ぞろいなんだよ!
チョビ そうか。
アンコニオ ああ。納得してくれたか?
お前らみたいなしるこもんは、赤福とかみたいな小豆のあんこもんに比べたら箱モノにできねえから弁当にできねえだろうって言っていきなりこんなものを貼られちまったんだよ…でもな、俺は何しろこんな重大な秘密任務の途中だったから、そこは…とりあえずこんな格好になりながらもそれ以上暴れることは抑えてだな、そのままその後ちゃんとこうやって両手で持って歩き続けたよ。
…そうだ、その次が43丁目だ。43丁目の角の服屋のショーウィンドーでふと自分の顔を見た時、俺はもうどうしたらいいのかわからなくなっちゃったよ?
コシアン ちょっと待て。
取ったらいいじゃないか。

置いて取ったらいいだけじゃないか。
アンコニオ 置く!…あんた頭いいな。
コシアン それほどでもない。
アンコニオ いや、秘密任務の遂行中に置くなんてことは、考えもつかなかった。
チョビ これ、秘密任務?
アンコニオ ああ。

(アンコニオの運んできたものは、お盆の上に布巾がかけられただけのものだ。)

チョビ めくられたらしまいなんと違う?
アンコニオ めくっちゃあダメだ。
チョビ そりゃダメだけどよ。
アンコニオ ああ。
チョビ 本部、大胆だな。
アンコニオ 俺も、それには驚いてるんだよ。何でこんなことさせるのか俺にはちっともわからねえ。
コシアン これはなんだ。
アンコニオ ん?本部からの預かり物だよ。
チョビ これ本部からの預かり物か。
アンコニオ ああ。
チョビ これはお前
コシアン …しるこだな。
チョビ しるこだ。
アンコニオ そうみたいだな。お?
コシアン 「ワラビじるこだ、まあやってくれ、シル・コポネ。」
チョビ 何だわらびじるこって。
アンコニオ わらびじるこ?山菜でも入ってるのか?
チョビ 入ってないだろどう見ても。
コシアン 入ってない。
アンコニオ 入ってるようには…
チョビ 餅のかわりにワラビ餅が入ってるのか。
アンコニオ あ、ちなみに、これはMY椀、ちなみにこれは、MY箸、だからな。じゃ、いってくれ。

(もぞもぞとワラビしるこを食う。)

アンコニオ じゃまあ、いただきます。
チョビ ちょっと季節外れなんじゃねえかこれ。
アンコニオ やっぱり本部のしるこはおいしいね。
コシアン んむ。

(食べて、しばらくまったりしている。)

チョビ 指令これだけ?
アンコニオ え?
チョビ 指令これだけ?
アンコニオ 俺が本部から預かってきたのはこれっきりだよ。そのままじゃあ、剥き出しじゃあなんだと思って、俺が自分でハンカチかけた。
チョビ ああ、そうか。
アンコニオ どうかしたのか。
チョビ いや、もっとこう、技術者が来たりとか、そういう話はねえのか。
アンコニオ 技術者?何の?
チョビ この工場のだ。
アンコニオ この、工場の?
チョビ しるこ工場を動かすって話なんだ。
アンコニオ おう、おうおう、何かそんな、噂は聞いたな。
チョビ 俺は、帳簿付けが専門だから動かす方はできねえ。
アンコニオ 帳簿付け。
チョビ ああ。
コシアン そう言えば、お前名前は何て言うんだ。
アンコニオ 俺かい?お前、俺の顔見て名前がわかんねえって、シカゴに来て日が浅いだろう。牛乳パック回収人のアンコニオっていやあちょいとした有名人だぜ?
コシアン アンコニオ?
アンコニオ ああ。
コシアン 知らねえなあ。…待て、ちょっと聞いたことがある。この間、アンコニオのアとウを間違えた奴を蜂の巣にしたってえのは、お前のことか。
アンコニオ そうだ。お前…そりゃあ、あんな奴はな、蜂の巣にして、当然だと、思わねえか?うん?

(銃声。蜂の巣が落ちる音。)

チョビ 何だこれは。
コシアン 巨大な蜂の巣だ。
アンコニオ 蜂。祟りかなあ。
チョビ あんまり関係ねえんじゃねえか。
アンコニオ じゃちょっと邪魔だし。
コシアン しかし
アンコニオ ん?
コシアン ちいっと聞いただけだな。俺の方がよっぽど長くいるはずなんだが。
アンコニオ 知らねえよ?
コシアン ま、無理もねえかな。ここ数年、刑務所に入っていたからな。
アンコニオ なにトンマやらかしてんだい。
コシアン シル中のコシアン・コルジオって聞いたことはあるか。
アンコニオ コシアン・コルジオ。…コシアン・コルジオって言やあ、禁しるこ法発令の日に、うちのボスのシル・コポネさんが開いた第1回闇しるこ対権力抗争…あの五右衛門風呂でわかしたっていう、伝説のしるこ…それを仲間みんなで食い終わった後に、何だか知らねえが後から手が回って捜査員が踏みこんできて、もうこれでシル・コポネ様もお縄頂戴かって時に
「俺がこれは全部食った。他の奴は関係ねえ。」捜査員にそう言って次の日の現場検証でも実際に五右衛門風呂いっぱいのしるこを飲み干したって言うあのコシアン・コルジオ?
コシアン あの時はちょっと辛かったな。
アンコニオ …ご無礼はお許し下さい。
コシアン わかりゃいいんだ。
アンコニオ …コシアンさん、(間。椀を洗っている。)あんたがさっきしるこ食った椀、見覚えがねえか。
コシアン ん?こいつは…俺が、シルコニオにやった椀じゃねえか。
アンコニオ ああ。
コシアン 何でこれをお前が持ってんだ。
アンコニオ シルコニオは、俺の、実の兄貴だ。
コシアン お前、シルコニオの弟か!そうか、どうりで、この眼鏡とかよく似てると思ったよ。
チョビ それは、フレームのデザインが同じだけやろ。
アンコニオ あんた、こういう話しに水さすようなこと言うくらいならどっか出ていてくれねえか。
チョビ そうか、悪かったな。

(チョビ、ドアから去る。)

コシアン おうおう、懐かしいじゃねえか。それで、シルコニオの奴はどうしてんだ。
アンコニオ それが…3年前の禁しるこ法制定5周年記念大闇しるこ選手権のよ、ウチの、シル・コポネ一家の代表として出たのはよかったんだけど、あのゼンザイーノ一家のヒジョーニ・ゼンザイスキーに負けちまって、しるこ悶絶イヤイヤシンドロームに陥って、死んじまった。
コシアン 何だ?あいつが、死んだだ?あの一流のシルキストと言われた…
アンコニオ そうだ。
コシアン シルコニオが…何てこった。覚えてるか。
アンコニオ ん?
コシアン シルコニオは…本当に一流のシルキストだった。
アンコニオ ああ、そうだ。
コシアン 奴は、片方ずつ、鼻からしるこを吹き出すことができた。
アンコニオ ああ。した。
コシアン それだけじゃねえ。奴の凄いのは、耳からもしるこを吹き出すことができたことだ。
アンコニオ ああ、そうだ。兄貴は、ちゃんと、右の耳、左の耳、右の鼻、左の鼻って、これを0.5秒おきに3回繰り返すことができたんだ。
コシアン ああ。もう人間業じゃねえ。
アンコニオ 完全に…シルキストだったな。
コシアン それが…死んじまうなんて。
アンコニオ あれは、ゼンザイーノ一味が、奴ら、その時にどんなしるこ…いや、奴らの場合はぜんざいか、を用意したと思う?
奴らしけてるからよ、金が無いからって砂糖が半分しか入ってないようなぜんざいを用意しやがったんだ。
コシアン 何だって?
アンコニオ そりゃ飲めるわな。
コシアン そんなことをやりやがったのか…
アンコニオ ああ。
コシアン ようし、俺が復讐に行ってやる。
アンコニオ おいおいおいおい、大丈夫だ。もう敵は取った。
ちゃんと、次の年の第6回大会に出た時に、俺が勝った。ゼンザイスキーは、地獄落ちよ。
…でも、とにかく、こんなところで兄貴を一番かわいがってくれてた偉いさんのコシアンさんに会えるってのも、何かの縁だ。嬉しいよ。
コシアン そうだな。…よし、アレをやろうじゃねえか。シルコニオの弔いだ。
アンコニオ あれって言うと…
コシアン アレだ。
コシアンアンコニオ しるこ体操だ。
コシアン いいか。やるぞ。
コシアンアンコニオ あずき。
コシアンアンコニオ おなべ。
コシアンアンコニオ おみず。
コシアンアンコニオ さとう。
コシアン 以上だ。
アンコニオ 息もばっちりだぜ。久しぶりにこれをした。シルキスト同志でなかったらこの体操はやるなって、暗黙の掟があるからな。
コシアン ああ。

(ドアが開き、チョビ戻る)

チョビ もういいか?
アンコニオ ああ、さっきは追い出したみたいですまなかったな。
チョビ いやいや。…それでお前、指令はこれで終わりなのか?
アンコニオ え?だから俺が本部からもらってきた物はこれっきりだ。
チョビ そうか、それはおかしいな。
コシアン 他にもさりげなく渡されたりしたものはないか。
アンコニオ さりげなく…さりげなくって言やあ、俺がこれ、ひょこたんひょこたん持って歩いてたらよう、近所の悪ガキどもがこんなものを俺にプレゼントしてきたよ。(カナダ国旗の葉っぱのような三叉状の、プラスチック製の竹の皮を取りだし、鼻の頭に付ける。)
チョビ そりゃ違うわ。
アンコニオ え?いやあ、おまけによう、ちゃんと手が凝ってるんだよ。説明書きまでつけてくれたよ。(動物図鑑のコウモリの顔の拡大コピーをパネル化したものを取り出す。)
チョビ いやそれも違うだろ。
アンコニオ コウモリに似てるってよ。
チョビ ああ…そうか。
アンコニオ こんな鼻の頭を持ったコウモリがいるんだって。
チョビ ああ…勉強になったよ。…でもそりゃ違うだろ。
コシアン 何か無いのか?
アンコニオ なんかって、何が?
チョビ 俺は帳簿関係を扱っているチョビエーリ・チョビエリーニって者だ。
アンコニオ ちょ、帳簿関係を扱っているチョビエリ…?
チョビ 俺は帳簿関係を扱っているチョビエーリ・チョビエリーニって者だ。
アンコニオ ややこしい。
チョビ 略してくれていい。
アンコニオ チョビ。
チョビ スボッ。

(コシアンはアンコニオの荷物を調べている。何か発見。)

コシアン 何だこれは。
アンコニオ チョビ。
チョビ さんぽいくの?
アンコニオ ええっ?…なんかチョビって言ったら変な反応するんですよ。
チョビ あそぼ。
コシアン あいつはそういう奴なんだ。
アンコニオ こ、こんな奴がいるんですか?
コシアン ああ。
アンコニオ こ、こんな奴が、帳簿付け?
コシアン ああ。ハスキー家の者はみんなこうなんだ。
アンコニオ ああ…名門…ですね。
コシアン ところでこれは何だ。
アンコニオ それは、見ての通りビーチボールですよ。
コシアン 何でビーチボールなんて持ってるんだ。
アンコニオ え?ああ、それは、物を拾うの、好きでよ。48丁目と43丁目の間の、45丁目の角で、拾ったんだ。ゴミ箱から。
コシアン もしかして、こういう物にボスの指令が入っているかもしれない。
チョビ そうだな。よく、電話ボックスとかを、指令をやりとりする場所にするんだ。
アンコニオ ああ。

(もぞもぞビーチボールの入ったポリ袋を開けてみる。)

コシアン お?
チョビ おお。
アンコニオ ん?
コシアン ボスの指令じゃねえか。やっぱりだ。
アンコニオ 何でボスそんなところに指令書を?
コシアン (指令書を読み上げる)「1人1つづつ、4つのビーチボールを膨らませろ。シル・コポネ。」
チョビ ボスは何でもお見通しなんだ。
アンコニオ 何でも?
チョビ 何でもお見通しだ。
アンコニオ な、何でもったって、
コシアン しかし4つってのは間違いじゃないか。
アンコニオ 3人しかいねえしな。
チョビ これはもう1人来るんだ。
アンコニオ 来る?
コシアン 来るんだ。
アンコニオ 来る…
チョビ ボスは何でもお見通しだからな。
アンコニオ ええーっと、そ、そいつはどんな奴だい。俺、恐い奴は苦手だからな。
チョビ 恐くないだろう。
アンコニオ 恐くない。
チョビ きっと、朗らかだ。
アンコニオ 朗らかな奴が、来るのか?
チョビ 朗らかな奴だ。
アンコニオ 朗らかな奴が、朗らかってったって、アメリカ人離れした朗らかさだったら、俺はちょっと…困っちゃうな。
チョビ じゃ、すごくアメリカっぽくて、朗らかな奴だ。
アンコニオ アメリカっぽくて朗らかなのか!
チョビ アメリカっぽくて、朗らかなんだ。
アンコニオ ええええっ?だったら、ちょっと仲良くできるかなあ?
チョビ そうだ…
アンコニオ でえ、そいつはどっから来るんだ?
チョビ こっちから来ると思う。こっちだ。

(アンコニオが銃を抜く。)

…いや、一々銃を、抜くな。
アンコニオ あ、すまんかった。心配で、ちょっと、つい。

(アンコニオ、蜂の巣を片付ける。)

…片付けておかねえとな。
コシアン 本当だろうな?
チョビ きっと来る。
アンコニオ 来ねえよ?
コシアン 何でだ?
チョビ 呼んでみよう。
コシアン 今何やってたんだ、ちなみに。
アンコニオ 来たらすぐ、ビーチボール膨らまさせようと
コシアン わかった。
チョビ 呼んでみよう。
アンコニオ 呼ぶって、何て呼ぶんだ?
チョビ 何て呼ぶんだ。
コシアン おーい。
アンコニオ おーい。
コシアン おーい。
アンコニオ おーい、で、来るんだな?
チョビ 行くか。
コシアン ああ。

(3人めいめい、もぞもぞと呼ぼうとするが、タイミングが合わず、なかなか声が出ない。)

チョビ …号令を、いれよう。
アンコニオ ああ。
コシアン じゃいくぞ。
チョビ おお。
コシアン せーの、
1、2、3、

(これではやはり出だしのタイミングが取れない。腰が砕けるチョビとアンコニオ。)

アンコニオ ああーっ、ちょっと待った。
チョビ 号令を先に決めてから、号令をかけよう。
コシアン ああ、わかった。
じゃあ、1、2のおーいだ。
全員 1、2のおーい。
コシアン せーの。
1、2の
全員   おーーーーーーい。

(ホッペターニョ朗らかにドアから登場。)

ホッぺアメリカン ハイ!
チョビ 来た…
アンコニオ 来た…
ホッぺアメリカン ハワユゥ!
アンコニオ ああ、アイムファイン、アンヂュー?
ホッぺアメリカン グッバイ!
アンコニオ あーっつ、待ってくれ、待ってくれ待ってくれ!
ホッぺアメリカン アーユークレイジー?
アンコニオ あー、アイアムノーマル。
チョビ ヒーズアリトルクレイジー、アイミーン、イェエ。
ホッぺアメリカン アー。
アンコニオ アメリカ人だああ(泣く)
ホッぺアメリカン ナイストゥミーチュ―。
アンコニオ ええ、ええ、お頼み申します。
ホッぺアメリカン ワッツ?
アンコニオ 膨らましてください。
チョビ ヒーウォンツユートゥーブロウイット。
ホッぺアメリカン ブロウイット!
チョビ ブロウイット。
ホッぺアメリカン ブロウイット!
チョビ ブロウイット?
コシアン ブロウ、イット。
チョビ アイミーン、ブリーズ。
ホッぺアメリカン オーケーオーケー。

(壊そうとする、ホッぺアメリカン。)

ホッぺアメリカン ブレイク。
チョビ ノーノーノー。
コシアン ブロウ。
チョビ メイクイット、ふーふー、アイト?
コシアン ブロウ。
ホッぺアメリカン ブロウ?
チョビ ブロウ。L。BLOW。
アンコニオ 見せてやるよ。
ホッぺアメリカン オーケーオーケー。

(アンコニオ・フケンコウが膨らませてみせたビーチボールを受け取り、その場でつく。)

アンコニオ ついたよ。
コシアン そりゃ違う。
チョビ どうしよう。
コシアン とりあえず…ここは、問答無用に、
チョビ やってもらうか。
コシアン やってもらおう。

(アンコニオがホッぺに渡したのは、とりわけ膨らませにくいボールである。)

アンコニオ はい吸って、吐いて…って、日本語わかんねえか?人力でやるんだからな。
コシアン 全然膨らまねえな。
チョビ あと、体力の問題だから。
コシアン ま、多分こうやっておけば。
チョビ なんとなくわかるだろう。
コシアン 大丈夫か。
チョビ とりあえず。
アンコニオ な?こうするんだ。

(膨らまない。)

コシアン こいつはダメだ。
チョビ けどこいつは知りすぎたよ。
コシアン クールにやってしまおう。
チョビ そうだね。
アンコニオ あんた知りすぎだよ。物知り博士より。
コシアン 何か言い残すことはないか。
ホッぺアメリカン パーティーに行かなあかん…
チョビ 日本語わかるやんこいつ。

(銃撃。ホッぺ死ぬ。)

アンコニオ 片付けやすか。
チョビ そうだな。
コシアン 俺は英語は嫌いだ。
チョビ 開けられるのか?(ドアを)

(ドアから、ホッぺアメリカンを引きずって3人退場。下手からコポネ登場。)

コポネ おーっす。2度目だというのに元気が無いな!おーっす。
皆さんが、2度目とは言え答えにくいのはわかる。
しかし、本当は心の中ではおーっすと答えてくれた全ての皆さん。歯磨けよ。宿題やれよ。また来週。

(コポネ去る。入れ代わりにコシアン戻る。)

コシアン やれやれ。あんな膨らんだ奴を埋めるのは手伝ってられねえよ。まだしばらくかかりそうだな。ということは、今、誰も、いないってことだ。誰もいない…誰もいない…見つからない。
…私は、FBIの者だ。ここ、コポネの工場に、コポネの犯罪の証拠を挙げるため忍び込んだ。ちなみにFBIとは、太ったボディをいたぶる会だ。ここにコポネの裏帳簿が隠されているはずなんだ。我々はCIAからその情報を得た。ちなみにCIAとはしるこ嫌がりアソシエーションの略だ。
なかなか見つからない。

(消しゴムに銀色のアルミ版を巻きつけ、待ち針をアンテナ状に刺したものを取り出す。)

ここは一つ攪乱戦術といこう。これは小型発信機に見えるだろう…小型発信機型の消しゴムだ。こいつを、このあたりにさりげなく置いておく。奴らは小型発信機と間違えて大騒ぎするに違いない。その気に乗じて…攪乱戦術だ。

(発信機に見たてた消しゴムを、奥の黒板の手前に置く。)

ちょっと目だたなすぎるかもしれないな…こうやって、電波を…これでばっちりだ。

(黒板に何重もの弧になった、電波の絵を描く。下手にコシアン退場。)

(入れ代わりにドアよりチョビ登場。)

チョビ やあ、あいつ重かったね、あれ?なんだ、戻ってねえのか。っていうことは俺一人だっていうことだな。大丈夫か、本当に俺一人なんだろうな…
甲高い声 ココニイルヨ。

(チョビが後を見せると、コート後部の襟から、ネコのヌイグルミが頭を出している。それが話しているという趣向。)

チョビ あれ?何か今聞こえなかったか…気のせいか。
甲高い声 ココ、ココ。

(再びネコのヌイグルミ。)

チョビ ああ!ど、どうなっているんだ一体。とうとう頭の方がおかしくなってきたのか?
…そんなことはない、これは、私のマーカムだ。(ヌイグルミを後から取り出す。)マーカムというのは私が、国税局の仕事を私が子供にわかりやすく伝えるために使う人形だ。私は実は国税局の人間だ。国税局の人間として、コポネの脱税の手伝いをしてきた。つまり、裏切り者だ。それなのに、コポネの奴は、俺が知りすぎたからって裏帳簿ごと俺を消そうとしているような気がする。だから俺は裏帳簿を見つけ出して、証拠ごとゼンザイーノ一家でもFBIでもなんでもいい、売っぱらってやるんだ。
せっかくだから、マーカムにちょっと実演してもらっておこう。

(手にヌイグルミをはめる。指人形になっているのである)
    
マーカム。アメリカ合衆国の税金の使われ方の一番大事なものは何かな。
(甲高く腹話術風に)ンー、グンビノカクチョウ。
そうだ、軍備の拡張だ。…マーカム、もうちょっと、ないかな。
(甲高く腹話術風に)ンー、グンビノカクチョウ。
んーそうだな、軍備の拡張だ。…マーカム、もうちょっと、ないかな。
(甲高く腹話術風に)ンー、グンビノカクチョウ。
んーそうだな、軍備の拡張だ。…マーカム、もうちょっとこう、子供の前で言えるような奴を頼む。
(甲高く腹話術風に)ンー、ゲンロンノトウセイ。
もうやめよう…とにかく、裏帳簿だ。裏帳簿さえあれば、裏切ったのもごまかせるかもしれないからな。
あ、何だこれは。こんなところに、針の刺さった消しゴムがあるぞ。あ、痛い。これはきっと針供養だ。
あ、何だこれは。こんなところに、同心円状の扇形があるぞ。これは、私の見るところ…惑星直列だ。

(弧を惑星の軌道に見立て、惑星をかきくわえていく。)     

これは大変なことになってしまった…

(下手に去るチョビ。入れ代わりにドアからアンコニオ登場。)

アンコニオ 疲れました…半径50メートル深さ50センチの穴を掘って、奴の体置いてぜーんぶ足踏みして、地面固めるの疲れました。あれ?誰もいない。誰もいないのかな。誰もいないんだったらちょいとこいつを拝ませてもらおうかな。こいつは今日、フーマンチューの親父のところで手に入れた、明日の俺の女房の誕生日のプレゼントだ。夫婦(めおと)のしるこ椀だ。これだけじゃ足りねえかな…歌は準備してあるんだ。誰もいねえんだったら、ちょっと、こら、声出しても大丈夫かなあ。

(椀を打楽器代わりに叩きながら、歌い始める。メロディはサイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」)

       Unhealthy is Mrs. WhoKenkoh. 
       We love your pale face more than you know. 
          (Wo, wo, wo.)
       God bless your obesity, Mrs. WhoKenkoh. 
       Sevenfold of normal weight's preferred. 
          (Hey, hey, hey, hey, hey, hey.)

ここまでは、昨日も練習したんだよな。今日は、これにハーモニーをつける練習だ。

       Unhealthy is Mrs. WhoKenkoh. 
       We love your pale face more than you know. 
          (Wo, wo, wo.)
       God bless your obesity, Mrs. WhoKenkoh. 
       Sevenfold of normal weight's preferred. 
          (Hey, hey, hey, hey, hey, hey.)

ちょっと、苦しいなあ。ああ、これをこんな粗末に扱っちゃいけねえ!何しろこれは、1895ドルもした代物だからな。これで思い出した。1895ドル。本当なら、俺がこんな目の玉が飛び出るくらい高ぇものを、買えるわきゃねえんだ。フーマンチューめ、業突く張りだからなあ。ところがだ。フーマンチューの親父とやりあってるときにふと目についたのがこいつだ。お買い得品。

(お買い得品、とは、文庫本サイズの本又は手帳のようなもので、This is backとカバーに書かれている)
       
いやあ、俺はつい、こっちの椀の話も忘れて、フーマンチュウの親父に、どのくらいお買い得なんだって、きいちゃったね。そしたら答えるじゃねえか。マイナス2000ドル。えええーっ!?ほんとか?マイナス2000ドル。てことはだ。この椀と、このお買い得品を、セットで買えば、105ドルのキャッシュバック?そういうことだな?うん。えええーっ!?もらった。てなわけで、もらったのが、これだ。105ドルと一緒にな。と・こ・ろ・が、よく考えて見ればフーマンチューの親父がそんな簡単に人に金をやるような真似をするわけなかったんだよな。気付いたのは買った後だ。This is back。これは裏だ。俺は聞いたことがあるんだ。兄貴のシルコニオは死ぬ間際にこう言ったんだ。

兄貴のシルコニオはゼンザイスキーが133杯目のぜんざいを食ってる時、丁度兄貴は104杯目に取りかかってるところだった。

104杯目行きます。ぷはーっつ。をははんーっんんんーっつ

兄貴!どうしたーっ!

ぷしゅーっ。

えああ!兄貴が、左の耳からだけしるこを吹き出している…これは変だ、いつも兄貴は、右の耳の穴、左の耳の穴、右の鼻の穴、左の鼻の穴、右の耳の穴って、順番に0.5秒おきに出すはずの兄貴が、左の耳の穴だけからぴゅーっ。これは変だ。
       
ぴゅー。ぴゅー。ぴゅぴゅー。

うわあ、全部から出てきた。

ぴゅ。ぴゅ。ぴゅぴゅぴゅーぴゅー。

うあ?うあ?兄貴、しっかりしろ。

ぴゅ。ぴゅ。ぴゅぴゅぴゅ…(中略。ずっと続く)…ぴゅ。ぴゅ。ぴゅぴゅぴゅーぴゅー。

ああ?何?ぴゅぴゅぴゅ…(中略。ずっと続く)…ぴゅぴゅ…こいつは、モールス信号だ。

わかった兄貴。何?何?ええっ?シル・コポネ様の、裏帳簿の裏には、これが裏だって書いてあるってコシアンさんが言っていただ、ええええーっ!?兄貴!…兄貴…
       
これが、俺の兄貴の最後だ。これでわかるだろう?こいつがいったいどのくらいやばいのか。しかし、実は俺は金が要るんだ。この椀をあげる、俺の嫁さんのミセス・フケンコウ、何しろ、3期連続ミセズアンヘルシーオヴシカゴの座を守っているという、つわものだからな。毎日食うしるこの量もだてじゃねえ。なんせ毎日重さにして5.6ポンドも食うんだぜ。たまんねえよな。どんなに金があっても足りねえ状態よ。底にこの裏帳簿。これは使うっきゃねえよな。でも、どんなに見ても、俺にはこれに一体何がかいてあるんだか、これのどこがどう裏帳簿なんだか、さっぱりわかんねえ。けど、今はコシアンさんがいるんだ。兄貴はコシアンさんから聞いたって言うから、多分コシアンさんならわかるに違えねえ。ちょいっと目立つように置いておくかな。

(電波→惑星直列の絵に気付き)
       
ああ、何だこれは。ああ。どうやら、これは、二枚貝を上から見た図のようだな。この模様のパターン、もうちょっと端っこが無かったらはみ出るじゃないか。ああ、しかしこんな大味な模様じゃこの二枚貝も満足できねえだろう。書きこんでやるよ。名前も付けてやろう。スジスジテンテン…ガイ。大きくなれよ。あー、後はコシアンさんがくるのを待つだけだ。早く戻ってこねえかなあ。

(チョビとコシアン、戻る。)

あっ、コシアンさん、ちゃんと地ならし終わりましたよ。足踏み、50メートル。
コシアン ああ。
チョビ お疲れさん。

(チョビ、お買い得品に気付く。)

チョビ これはなんだ。
アンコニオ これは何でしょうねえ。
チョビ これは背中だって書いてあるぞ。
コシアン This is back。
チョビ 背中だろう。
コシアン まあ、そうとも読めるな。
アンコニオ バックって、背中なんですか。
チョビ ん、普通そうだ。
アンコニオ 普通、そう。
コシアン これは、どうしたんだ。
アンコニオ いや?ここにあった。
コシアン ほう。…なんか、アヤしそうだな。俺が…
アンコニオ いやいやいやいや、何書いてあるんすかね、怪しそうって。
チョビ おい、何書いてあるんだ。
アンコニオ お前が触るようなもんじゃないんだ。
チョビ あそう、いいよ、じゃ。
アンコニオ 何書いてあるんでしょうね。
コシアン こういうのは、慎重に見なくちゃいけねえな。
アンコニオ 慎重に。
コシアン まあ、俺が預かって
アンコニオ いやいやいや、慎重にって言えば、俺、169センチ。
コシアン そいつは慎重が違う。
アンコニオ ええっ、違うんですか。だったらどうやって…慎重にっていうとこういう形が
チョビ この程度の知力の奴には読めないだろう。
アンコニオ おいおいおいおい。
コシアン 待てよ。まあいい。ここで読みゃいいんだ。…こいつは…サンスクリットじゃねえか。
アンコニオ サンスクリット?
チョビ サンスクリットじゃあ…俺は関係ない。
コシアン おいしいプリンの作り方。
アンコニオ サンスクリット語で、おいしいプリンの作り方!?
コシアン まず、卵をかき混ぜる。そこに砂糖を入れ、牛乳を入れ、焼きます。
チョビ おんなじだ。
アンコニオ 確かに概ね合ってる。
コシアン それしか書いてない。
アンコニオ ええっ!
チョビ なんかこうサンスクリットらしさがないな。
コシアン ま、そういうことだ。
アンコニオ じゃ、こりゃ、裏帳簿じゃないのか。
チョビ 裏帳簿?
コシアン 裏帳簿?
アンコニオ えっ?
チョビ 何だ、裏帳簿っていうのは。
アンコニオ いや、かな、って。
コシアン 何か怪しいな。お前何か隠し事をしてねえか。
アンコニオ 裏帳簿っていうのはだな、うら若き乙女がつける帳簿のことを裏帳簿って言うんだよ。
チョビ 納得できるか?例えばそれは、うら若き青年だったらダメなのか。
アンコニオ 人間による。
チョビ ああ。ま、いいや。
アンコニオ で?
チョビ そんなことよりお前、機械を動かすマニュアルかなんか見つけ出せないと、いつまでたってもこの工場を動かせないぞ。
アンコニオ マ、マニュアル?
コシアン そんな文書みたいなものが、あるかね。
アンコニオ 俺はしらねえぞ。
チョビ 何かこう、紙だと思うけどな。
アンコニオ 紙?
コシアン 紙か。紙っていうと…
チョビ ここになんか封筒があるぞ。これかな。
アンコニオ え?うーん。
チョビ これは、ただの、ビラだな。
コシアン ビラだな。
アンコニオ ん?んー。
コシアン ビラか。
チョビ これは違うようだ。
コシアン ん。
チョビ ん。
アンコニオ まさかこれを器用な順番に並べたら、動かし方が出てくるとか、そんなバカなことはないだろうな。
チョビ じゃお前そこでやってろ。
アンコニオ よし。
チョビ これかな。
コシアン ん?それはまた、カラフルな。というより何か、
チョビ 可愛らしいな。
コシアン 可愛いな。
チョビ お前好きなだけやってていいよ。
アンコニオ いや、なんかちょっと、気になるな。
チョビ あっ。これは…
コシアン ボスの…指令書だ。「今から3分間全員でオペラをせよ。」
チョビ オペラだ。
アンコニオ オペラっていうと…「後で中野から福助と呼ばれるようになった一人の男が、少し酔ったような足取りでジャンジャン横丁を歩いていた」ってはじまる、あれか。
チョビ 何だそれは。
コシアン 日本三文オペラだ。
アンコニオ 違うのか。
チョビ 勉強になった…
アンコニオ 何しろあれはアパッチ族とか、そんなインディアンの名前みたいなのがでてくるお話だからな。違うのか?
コシアン 違う。
チョビ 違う。…オペラだ。
アンコニオ オペラっていうと、ど、どんな感じだい?
コシアン オペラを知らねえのか。
アンコニオ 教養ねえもんでよ。
チョビ ♪あ〜〜〜、とかいうやつだ。
コシアン ♪あ〜〜〜
チョビ ♪あ〜〜〜
アンコニオ ♪あ〜〜〜
チョビ オペラだ。
アンコニオ これがオペラか?わかった。オペラをやりゃあいいんだな。

アンコニオ ♪あ〜〜〜わたしは〜〜〜〜コポネ〜〜〜い〜っかの〜〜〜357番目の〜〜〜ぶ〜〜〜か〜〜〜
チョビ ♪わたしは〜〜〜あ〜〜〜28番目〜〜〜
コシアン ♪わ〜〜〜たし〜〜〜は〜〜〜15.5番目の〜〜〜ぶ〜〜〜か〜〜〜
チョビ ♪小数点以下はどうやってだ〜す〜のです〜か〜〜〜
アンコニオ ♪か〜〜〜(ハモル)
コシアン ♪子供が〜〜〜俺の前に一人〜〜〜いたんだ〜〜〜
チョビ ♪あ〜〜〜
アンコニオ ♪そ〜〜〜し〜〜〜て〜〜〜シルキズム〜の〜お〜〜き〜〜て〜〜で〜〜は〜〜300〜〜
50番〜〜よりも〜〜ちょっと〜わかめの〜はなれたとした上位のものとしるこさかずきじゃなくてなぜかビーチボールふくらませあいをするとかいきゅうが上位のものの.6になる
チョビ ♪ちょっとふくざつなるーる
アンコニオ ♪そこでわたしはあなたとビーチボールの膨らませあいをしたい〜〜〜まずはくうきをぬきまして〜〜
チョビ ♪まずはぬきまして〜〜
コシアン ♪て〜〜〜(ハモル)
アンコニオ ♪そしてふくらませ
コシアン ♪かなりこっけいなようす
チョビ ♪これであなたも
アンコニオ ♪28.6ばんめ〜〜〜のぶ〜〜か〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
コシアンチョビ ♪か〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(ハモル)
チョビ これぐらいかな。
アンコニオ 3分たったか。
チョビ 十分だろう。
コシアン ちょっとしんどかったな。
チョビ 次いってみようか。
アンコニオ で、次はなんだい。
チョビ あ、こんなところに。
コシアン こんなところに。
チョビ なんだかこう、図面ぽいもんがあるじゃねえか。こりゃ怪しい。
コシアン ん。
アンコニオ どうだ。何か入ってるか。
コシアン ん。図面だな。
アンコニオ 図面だな。
コシアン ちょっと、違うようだ。
チョビ お、これは何だ、これは。
アンコニオ 何だこれは。
アンコニオ また指令か…
チョビ 指令だ。…読んでくれ。
アンコニオ 「この指令を受け取ったものは、私への忠誠心を示すため、さるちょっとした有名劇団の座長を舞台の上におびき出し、餌付けをしろ。シル・コポネ。」
チョビ さるちょっとした有名劇団の座長って言うと…
コシアン ちょっとした有名劇団の座長…
アンコニオ て、ことは、だ。もしかして…じゃねえのか。ああ、ちょっと、呼んできてくれねえかな。
チョビ 何お前しり込みしてんだ。
アンコニオ ええっ、俺餌付けのエサの準備。
コシアン まあ、ボスの命令だからな。しょうがねえ。

(客席に目を走らせ、囁きあうコシアン・チョビ。)

コシアン ああ、いたろう。
チョビ それでいいか。いこう。多分、この中で一番、メジャーだろう。
コシアン だろうな。

(客席から劇団衛星座長の蓮行氏が連れ出される。アンコニオは客席後方でしるこを煮ている広田さんにしるこをもらいに行く。)

アンコニオ さあ、しるこを頂けますか。
広田 まだ生煮えなんですけど。
アンコニオ 生煮えでも結構です。
チョビ かけなさい。
広田 あの私、知りませんから…
アンコニオ はい。ああ、どうもありがとう。…ボスの、命令だからな。
蓮行 はい。
アンコニオ 餌付けってのはな、食べさせるんだ…ほれ。
チョビ おいしそうだ…
アンコニオ おいしそうだ…
チョビ っていうか、おししいの?
蓮行 これ、砂糖入ってないんですか?
広田 あ、まだ砂糖入れてないんで…
チョビ ヘルシーだ。
アンコニオ ヘルシーなやつ、ヘルシーなやつは、こんなところに置いておいちゃいけねえんじゃねえか?
チョビ じゃあ、食べさせてアンヘルシーに。
アンコニオ いや、でも、砂糖が入ってない小豆なんて、普通は、健康のもとだろ?
チョビ そうか?
アンコニオ ああ。
コシアン そろそろなついたかな。お手。
アンコニオ なついてないぞ!
チョビ もっと食べさせないとダメだよ。
アンコニオ その前に、なつくまで監禁してしまおう。
チョビ あ、檻がある。

(劇団PITが裁判所の証言台として用いた舞台装置が残されていた。縦に木製の桟が走って、檻状に見える。)

蓮行 うっそお。
チョビ お誂え向き。
蓮行 そうだね…

(ゴソゴソ。檻を用意。)

アンコニオ ああーっ。…あ、こっち来。な。あ。

(ゴソゴソ。閉じ込める)

アンコニオ え、餌付けだな。…ほい。
チョビ ほほえましい光景だ。
アンコニオ 物凄ぅ、恐え顔するよう?本当に懐いてるのか?
チョビ や、どうだろ。わかんねえ。
コシアン 根気よくやってみるんだな。
アンコニオ 根気よく?
チョビ 根気よくだ。
アンコニオ あ、わ、わかった。なら、俺はこれを根気よくやってるから、その間に、また、何か、捜しといてくれよ。…根気よく。
チョビ これなんか、怪しいな。
コシアン ん?それ…空だ。
チョビ 空か?
コシアン 空だ。
チョビ ああ!書いてあるじゃないか、お前。
アンコニオ ああー。根気よく。
コシアン これか?
チョビ これだ。
アンコニオ な、何だ?
チョビ ちょっと嫌だな。
アンコニオ 何なんですか?
コシアン いや、どうしよう。
チョビ 半分にしねえか。
コシアン まあ、そうしようか。
チョビ そうしようか。
アンコニオ ならその残り半分は、恩赦ってことで、解放するんですか?
チョビ それもいいだろう。とりあえず解放しよう。
アンコニオ 恩赦だって。

(モゾモゾ。蓮行氏解放。)

アンコニオ 餌付けには失敗しちゃったよでも。
チョビ コール、コールしようか。蓮行チャチャチャ、とか。
アンコニオ で?
チョビ さっきのは、スクワット30回だ。
アンコニオ スクワット30回?
チョビ スクワット30回。
アンコニオ フルスクワットかヒンズースクワットか?
チョビ 書いてなかったからどっちでもいいだろう。
アンコニオ どっちでもいい…しかし、何だかフルスクワットの方が、
チョビ 楽かな。
アンコニオ 忠誠心が満ち溢れてる様な気がしねえか?
チョビ じゃフルでいこうか。
3人 1。2。3。4。5。
コシアン しかしボスは何故こんな指令を出すんだろう。
アンコニオ わからない。
3人 6。7。8。9。10。
チョビ 数がわかんなくなるから喋るなよ。
アンコニオ (スピードアップする。)11。12。13。
チョビ おい。
アンコニオ (スピードアップする。)14。15。16。
チョビ おい!
アンコニオ 17。18。19。20。21。22。23。24。25。26。27。28。29。30。…こ、これでいいのか。
チョビ すごいしんどかったよこれ。
アンコニオ なんか、訳わかんなくなってる。で、何だ。
チョビ マニュアル捜してんだろ。
アンコニオ マニュアルだ。マニュアルっていうと、ええと。
コシアン あるのか本当に。
チョビ わかんねえ。
アンコニオ ん?
チョビ まただ。読んでくれ。
コシアン 「ボスの指令。お兄さんを殺されて悲しいホッペターニョ弟が、どこかからやってくる。こしょぐり倒してたっぷりと笑わせてあげなさい。」
チョビ ま、くるんだろうな、そりゃ。
アンコニオ どっから来るんだい?
チョビ こっちじゃねえか。
アンコニオ こっちか。
チョビ 一々銃を抜くなっちゅうの。
アンコニオ ええ?すまん。…こしょぐり倒せばいいんだな。
チョビ こしょぐり倒せばいいんだ。

(ここでホッペが入って来る。よってたかってこしょぐるが。)

コシアン 倒れねえぞ。
アンコニオ 倒れないっすね。
チョビ 倒れねえな。
ホッぺ弟 何してるんすか?
チョビ いや、ナニなんかしてないよ。
ホッぺ弟 夢みたいだ。
アンコニオ 夢はな、痛いぞ。
チョビ 夢痛くないよ。夢は痛くない。
アンコニオ 夢は痛くない。
チョビ 痛いと、夢じゃないんだよ。だろ?
アンコニオ 夢はな、こそばいぞ。
チョビ そう言われてもな。
ホッぺ弟 兄さん、これはいったいどういう罰なんだい…
コシアン こりゃダメだな。
チョビ ダメだな。
コシアン やっちまうか。
アンコニオ やりますか?何か、言い残したいことがあったら、言ってもいいよ。
ホッぺ弟 …いや…別に…
アンコニオ じゃあ、やっちまいますか。
コシアン 悪く思うな。

(銃撃。)

ホッぺ弟 …なんか痛い…
チョビ 頑丈だわ、この人。

(ばたり。)

チョビ あ、そうでもなかった。
コシアン 鈍いだけだな。
アンコニオ すこやかな寝顔ですね。
チョビ 死に顔だよ。
アンコニオ あ、すいません。
コシアン 片付けようか。
チョビ せーの。
アンコニオ よいしょよいしょ。

(死体を片付ける3人と入れ代わりにコポネ登場。)

コポネ なーるほど。裏帳簿が欲しいってわけか。それなら、ここだ。裏帳簿。マルシ。(○の中にカタカナで「シ」)相手が欲しいならば、出してやろうじゃないか。

(脚立を立て、)

目につくところに、

(舞台真上の蛍光灯の笠に、ガムテープで裏帳簿を貼りつける。)

これで、もうちょっと観察して、裏切り者は全て始末する。

(コポネ去る。入れ代わりにチョビ戻る。)

チョビ 3人ぐらい殺してしまった。…あれ?こんなものさっきあったか?

(頭上の裏帳簿に気付く。)

(甲高く腹話術風に)ナイナイ。
そうだよな。

(跳んで取ろうとするが、届かず。)

っとお。つらいな。棒かなんか

(角材で叩き落そうとするが、ダメ。)

…ダメか。そうだ、先っぽにマーカムをつけてみよう。

(角材の先端にヌイグルミ指人形をつける。)

どうだマーカムつかめるか。
(甲高く腹話術風に)ンナワケナイヤン。
役たたずめ…足場だ。足場が必要だ。

(チョビ去り、入れ代わりにアンコニオ戻る。)

アンコニオ 今度はちゃんと学習して、直径10メートルの穴にしました。それでも、埋めたてるのはけっこうしんどかった。ああ、もう、足がだるい。スクワットなんかもしたもんな。よく考えて見たら、今日はなんか視野が狭いと思ったら、こんなもの、付けられてたんだった。

(眼鏡レンズの上半分に付けられていた、お弁当用のプラスチック製竹の皮をはがすと、裏帳簿に気付く。)

見えない。見える。…今まで、全然目につかなかったけど、裏帳簿、マルシ。これは、コポネ様の裏帳簿だぞ。違いねえな。届くのはとどくな。しかしこのまま引っ張るとこのおんぼろ工場だと天井ごと落ちて来かねない。のぼれば、いけるかもしれない。

(小さい椅子に大きい椅子をのせ)

逆だ。

(大きい椅子に小さい椅子をのせ、その上に上る。)

乗れた!ラッキー。ははーん。やった、乗れたよ。

(椅子崩れる。)

あ、取るのを忘れていた。しかしこんな恐いこともういっぺんやるのはご免だなあ。何か。剪定バサミみたいなのがないかな。こう高い枝を切るチョンチョン、みたいなのがあればいいんだな。

(アンコニオ去る。入れ代わりにコシアン戻る。)

コシアン 何で俺が後片付けしなくちゃいけねえんだ。

(裏帳簿に気付く。)

おお、これは…間違いない。裏帳簿だ。全然気がつかなかった。よし、これをなんとか手に入れて…そうだ、こうやっている間にもあの二人が戻ってくるかもしれない。まずあの二人をなんとかしなけりゃいけない。
よし。
秘密兵器だ。
これはFBIの特殊兵器、催眠ピアニカだ。これを聴いた者は催眠状態に陥ってしまう。恐ろしい科学技術の粋だ。ちょっと吹いてみよう。

(ピアニカを吹く。ファー。すると急に左右からアンコニオ・チョビがふらふら出てきて、バタバタ倒れて寝てしまう。)

アンコニオ は?
チョビ んあ、急に眠くなってしまった。
コシアン 完璧だ。
アンコニオ 剪定バサミ。剪定バサミだ。
チョビ 確か、工場の隅に脚立があったような気がするぞ。

(ピアニカを吹く。ファー。アンコニオ・チョビは再度、バタバタ倒れて寝てしまう。)

アンコニオ コシアンさん?
コシアン どうした。
チョビ 脚立脚立、脚立がここに…
アンコニオ 剪定バサミが…
コシアン 脚立?
チョビ ああ、これだこれだ。
コシアン おい、何をする。
チョビ いや、脚立に乗るんだ。
コシアン 脚立に乗って…
アンコニオ 何で、脚立に乗るんだ?
チョビ 高いところに登りたいからだ。
アンコニオ 高いところに登りたい?煙みたいなやつだな。
チョビ 人間だよ。
アンコニオ ええっ?確かに実体はある。
チョビ この辺で登りたいな。
アンコニオ いや、な、何でこの辺なんだ。
チョビ いやいやいや、ちょっとこう、この辺が、いいスポットだって、
アンコニオ 誰が言ってたんだ。
チョビ 関西ウォーカーに書いてあった。
アンコニオ か、関西ウォーカー?
コシアン 何もここで登らなくたっていいだろう。
チョビ ここで登りたいんだよ。ここで…登りたいなあ。
アンコニオ まあまあまあまあ。
チョビ なんなんなんなんだ。
コシアン おい、ちょっと、これを聴け。

(ピアニカでラーメン屋の曲を吹く。チャラリーララ、チャラリラリラー。ラーメン屋と客になってしまうチョビ・アンコニオ。)

チョビ はいらっしゃい。
アンコニオ ラーメン一丁。
アンコニオ ええ?
チョビ 何かおかしいぞ。
アンコニオ なんだなんだ。

(ピアニカで正露丸の曲。パッパラパッパ、パッパラパッパ、パッパパッパパパパ。下痢に苦しむ人たちになってしまうチョビ・アンコニオ。)

チョビ 空けてくれ!
アンコニオ 入ってます!
チョビ はやくしてくれ!
アンコニオ 入ってます!
チョビ ん?
アンコニオ あれ。
チョビ おかしい。
アンコニオ おかしい。
コシアン 何となく、反応が変だ…
チョビ よいしょー。

(ピアニカで蛍の光。卒業式になってしまうチョビ・アンコニオ。)

チョビ 代表、前へ。おめでとう。
アンコニオ 有難うございます。

(コシアン、出しぬいて脚立に登る。)

チョビ あー、おいおいちょっと。
アンコニオ あ!
チョビ ちょっと、ちょっとまて。お前こそ何高いところに登ってるんだ。
コシアン いや、登りたくなったんだ。
アンコニオ コシアンさん、高いところは恐いっすよ、恐いっすよ!
チョビ お、おいおい!
チョビ 危ねえ、危ねえ!
アンコニオ ど、どうしたらいいっすか?
コシアン いや、あまありこっちを見ないでくれ。
チョビ こっちを見ない、こっちを見ないって…
アンコニオ ど、どう

(バリバリ。下手のパネルを破壊してコポネ登場…と思いきや、意外と頑丈で出るのに手間取る。)

コポネ 出らんねえじゃねえかばかやろう!
チョビ 気にするなコシアン、続けろ。
コポネ このやろう!…貴様らとうとう、証拠を見つけたぞ。ちょっとそのまま待っていろ。
アンコニオ ま、待っていろって言われたって、本当に待つのか?
チョビ ボスの、命令だからな…
アンコニオ ああ、そうか。逆らっちゃどんな目にあうかわかりゃしねえ。
コシアン ボスー。
アンコニオ もーういーいかーい。
コポネ 写真を撮ろうと思ったがカメラが無くなったからもういい。貴様ら!俺の部下の振りをして、とうとう正体を表しやがったな。
アンコニオ いや、部下の振りじゃなくって、部下っすよ。
コポネ ん?ごまかしても無駄だ。俺は全てを聞いたんだ。
コシアン!貴様、あの伝説のシルキストだったお前が、今ではFBIの捜査官だ?そして俺の裏帳簿を狙っていたんだろう。
アンコニオ そうか、悪いのはこいつだったのか!
チョビ これは許せねえや!
コポネ そして、貴様!チョビ!
チョビ あそぼ。
コポネ …二階堂、チョビが遊んで欲しがってるぞ。
アンコニオ あ、はい。うり。
チョビ スボッ。
コポネ そして、貴様!チョビ!
チョビ あそぼ。
コポネ …二階堂、チョビが遊んで欲しがってるぞ。
アンコニオ しょうがないな。
チョビ スボッ。
コポネ チョビエーリ!貴様、俺の、脱税の手伝いをしていたんじゃねえのか。
チョビ 散々手伝いをしたじゃないですか。
コポネ 何だと。それを今になって何を寝返ってるんだ。
チョビ 寝返ってないですよ!
アンコニオ つまり悪いのはこいつか!
チョビ おいちょっと待て。
コポネ そして貴様アンコニオ!貴様は、金が欲しいだけ、それだけでこの、帳簿を売っ払おうとしてるなんて、下級部下にも…なんだ。

(何か言いたそうなアンコニオ。)

アンコニオ えっ?
コポネ 何だ。
アンコニオ そんな、滅相も無い。ほらね、俺は確かに下っ端の部下ですけど、
コポネ おう。
アンコニオ ちゃんと裏帳簿を手に入れようと思ったのは訳があるんでさ。
コポネ ほう。ちょっとだけ聞いてみよう。
アンコニオ これ、僕がこっちは1年、こっちは2ヶ月かけて、純粋培養したジンサンシバンムシエキス。
コポネ わかりにくいからお客さんにまわしてみよう。
アンコニオ まわしますか。
コポネ おう。
アンコニオ 特徴は、1年ものは沈んでいるけど、2ヶ月もんは浮いている。そういう違いがあるんですけど、いかがっすか。
チョビ あの、一通り廻してから説明する様にな。
アンコニオ え?ね、あれを売っ払って…
コポネ けどあれは待っていられねえな。あれは適当に廻してしまえ。
アンコニオ ここに、ほら、小分けして売ってるんですよ。この売上がバカにならねえから、裏帳簿とやらに書き込みをして、ボスにがっぽり儲けてもらおうとそう思って。
コポネ ごまかしても無駄なんだ!貴様らにはな、このボスに逆らったからには、
コシアン ボス、誤解だ。
コポネ 死んでもらう。
コシアン 聞いてくれ。
コポネ 何だ。

(ピアニカでドナドナ。牛飼い・牛・牛飼いの子になってしまうアンコニオ・コポネ・チョビ。)

チョビ 父さん、父さんなんでチビを売っちゃうんだ!
アンコニオ ほれ。ほれ。歩け!歩け!
コポネ もーう。もーう。
チョビ チビがそんなに嫌がってるじゃないか!そんな、牛肉なんかにしちゃだめだよ!父さん!父さん!やめてくれよ!お願い!

(コシアン吹くのをやめて脱走。皆我にかえる。)

コポネ おいっ!

コシアンやむなく曲を再開。)

アンコニオ はいっ!はいっ!
コポネ もーう。もーう。

(コシアン脱走。皆我にかえる。)

コポネ コシアン!貴様、逃げるんじゃない!
コシアン 畜生。
アンコニオ さっきからなんか変だと思ったら、こいつか。
コポネ しかしだ。本当は今すぐにこう蜂の巣にしてやってもいいんだが、俺がなんで本当に、暗黒街の帝王なのか、お前らに、俺の帝王たる理由を教えてやろう。俺は、いつ何時でも、最後まで公正に、正々堂々と、勝負をするんだ。
だから、今もお前らに一度だけチャンスをやろう。
チョビ チャンスっていうとあれか。
コポネ おう。
チョビ 洋服を入れる。
コポネ それはタンス!お前らにももう一度だけ、チャンスをやろう。
アンコニオ チャンスって言うとあれっすか。シェーっとか言う人の。
コポネ それなんや。
アンコニオ ざんす。
コポネ ざんすか。…お前らにももう一回チャンスをやろう。
コシアン チャンスって言うと、あの、
コポネ おう。
コシアン うちわみたいな扇ぐと気持ちいい。
コポネ それは扇子!お前らにもチャンスをやろう。
チョビ チャンスっていうとあれだろう。
コポネ なんだ。
チョビ 山ん中に行って…
コポネ それはキャンプ!じゃあもう一度お前らにもチャンスをやろう。
アンコニオ 俺はもういらねえ!
コシアン 俺がやろう。

(コシアン、ドリフのビバノン節のような動きを見せる。)

コポネ ダンス!お前らにもチャンスをやろう。
アンコニオ ああー。

(ぴょん。)

コポネ ジャンプ!お前らにもチャンスをやろう。
チョビ タフでないと生きていけない…
コポネ それはアガサ・クリスティーか?
チョビ チャンドラーだ。
コポネ チャンスをやろう。よしもういいな!じゃあ、お前らにやるチャンスとは…お前らにちょっとしたゲームをやってもらおう。
アンコニオ ゲーム。
コポネ ゲームだ。人生はゲームのように…だから俺はいつもそうしているんだ。
チョビ どのゲームだ。
コポネ このゲームは、伝言ゲームだ。
3人 伝言ゲーム。
コポネ そうだ。お客さんに、伝言ゲームをしてもらう。正しく伝われば、伝わった奴は生き残れる。
3人 おお。
コポネ そうして、三人全部正しく伝わったら、俺が死んでやろう。
アンコニオ おお!そ、それは!物凄く、潔いですね、ボス!
チョビ 潔い。
コポネ おお、これが帝王の帝王たる由縁よ。
アンコニオ さすがだ!
コポネ そして、チョビ。
チョビ はい。
コポネ …もうちょっとルールを説明しよう。そして、5人以上。
3人 5人以上。
コポネ 5人以上経由して、ここは4人しかいないから一人移ってもらおう、でだ。こうすると1、2、3、4…ぴったりだ。5人以上、それはお前らが選んでいい。といってもほぼ確定だが…チョビ。お前がこっちだ。
チョビ こっちか。
コポネ そして、アンコニオ。お前が真ん中だ。
アンコニオ まんなか。
コポネ そして、コシアン、貴様が下手だ。
コシアン わかった。
コポネ で、もう、やってもらうひとには立ってもらおう。それはお前らが選んでいい。5人以上いるところでは。
チョビ それじゃ、ここのブロックと一番後ろの人立ってください。
一番後の赤い服の方、立って頂けますか。すんません。
アンコニオ それだったら、こちらは、えーと、3列目より前の方、ちょっと、お立ち願えますか。
コシアン えー、黄色の…えーと、
アンコニオ はっきり言って、今日はほとんど総立ちになってますよ。
コポネ 総立ち。…これは、決して、わからなくても、2度3度と言わないように。一回勝負。で、これはお客さんに見えちゃいけないから、お前らにこっそり渡す。
チョビ、お前はこれだ。
お前はこれだ。
お前はこれだ。
チョビ これは、悪いけど今日はもらったよ、本当に。
コシアン これはかなりつらいなあ…
コポネ さあ、それじゃ行ってもらおう。
アンコニオ それじゃ、前にお願いします。
コポネ 大きい声で言うなよ。
アンコニオ ええと、どっちの方でもいいんですけど…
チョビ 1、2、3、4、5で行きましょう。用意いいです。
コポネ あ、もうみんな来てるわ。
チョビ 今日はね、本当にね…思うんだよな、いつもな。
コポネ 途中でわざと捻じ曲げるやつがいるかもしれねえぞ。

(伝言を伝え終えて、登場人物たちは舞台に戻る。)

コポネ さてそれじゃあ、上手から聞いていってみようか。上手の最後、何でしょう。
蓮行 桃ジュース。
チョビ やったあ!
コポネ おおう。正解は、何でしょう。アシスタントのホッペターニョ君。まずは上手。おお、正解だ。
チョビ どだ!
コポネ じゃあ、真ん中の最後は、なんでしょう?
広田 自主管理?
アンコニオ おお!今日は順調だ!
コポネ ちょっとやばくなってきたな。あとは下手っ側だな、畜生。下手っ側何だ。
桐山 全能水球選手権。
コポネ おおう!危なかったぜ!全日本水球選手権だ。というわけでコシアン、残念だったな。覚悟はできてるんだろうな。
コシアン 出来てるわけねえだろ!

(銃撃戦になる。怒号・悲鳴が飛び交い、ホッぺ以外の全員が銃弾を受けて死ぬ。)

コシアン ちきしょう…
ホッペターニョ 大変だ…ボス、ボス…死んだのか。惜しい人を亡くした。しかし、伝言ゲームで勝負するなんて、馬鹿な人だ…しかも3対1だろ…わかるだろ、普通。
どうすっかなあ…これで、コポネファミリーも解散だ…また新しい就職先を捜さないとな。
(バナナを取りだし食う。)…こんなところに毒が!

(ホッペターニョも倒れる。暗転。)

(エンディングのスライド。終了。)

ご覧の通り、昼間の回とはかなり違います。比較対照とかしてるとイヤになるからやめておいた方がいいです。
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